サイコ野郎からケチな小悪党まで変幻自在!キャリアと共に振り返るハリウッド随一の“イイ顔”俳優、レイ・リオッタの名演
『ハンニバル』で見せた脳味噌食いの衝撃!
数々の強烈な姿を見せてきたリオッタだが、彼史上最もインパクトのあるシーンは『羊たちの沈黙』(95)のその後を描いた『ハンニバル』(01)で見ることができる。本作ではなにかとクラリス(ジュリアン・ムーア)にちょっかいを出す嫌味な司法省のポール・クレンドラーを演じている。
セクハラ発言をしたりと小物感あふれる嫌がらせを繰り返していたツケが回り、あろうことかクラリスを愛するレクター博士(アンソニー・ホプキンス)に捕まってしまったポール。麻薬で意識混濁状態にさせられたままディナーの席に座らされると、頭をパックリ割られ、知らず知らずに自らの脳味噌を食べさせられるというド級の罰ゲームを食らうことになるシーンはとにかくショッキングだ。
最新作『コカイン・ベア』では悩めるギャングのボスに
ここ最近も『ジャッキー・コーガン』(12)でボコボコにされてしまう賭場の管理人を演じ、小悪党の悲哀と情けなさを体現。『マリッジ・ストーリー』(19)では、好戦的で高給取りのギラついた弁護士役で成金感漂う男になりきるなど、得意とする分野でさすがの存在感を発揮していたリオッタ。
麻薬密輸人がFBIに追われ、セスナ機からコカインが入ったバッグを投げ捨てると、あろうことか巨大なクマがその白い粉を食べてしまった…という嘘みたいな本当の話を映画化した『コカイン・ベア』では、騒動を引き起こすコカインの持ち主である麻薬王を演じている。
1985年ある日のジョージア州上空、運び屋は雇い主のシドの命令に従い、大量のコカインが入ったバッグをセスナ機から森へと投下するが、その直後、自分自身も誤って落下。ブツの場所をシドに伝える前に死んでしまう。シドは部下にコカインの回収を命じるが、山ではコカインを食べてしまったクマが大暴走。シドを逮捕しようと意気込む警察、森林警備隊、3人組の不良、山に忍び込んだ幼い子どもらにクマが襲いかかっていく…。
リオッタが演じるシドは極悪非道な麻薬王。コカインの問題と同時に、妻を癌で失って以来塞ぎ込んでいる息子の子どもを育てるなどなにかと悩みの多いキャラクター。ゴリゴリの顔圧で部下をすごむギャングのボスとしての姿と同時に、覇気のない息子に頭を悩ます父親としての人間らしい表情にも注目だ。
またクマの魔の手によってひどい目に遭ってしまうのか?リオッタだけに情けない姿や『ハンニバル』を超えるショッキングなやられっぷりにも期待したくなってしまう。
亡くなった際に撮影中だった『Dangerous Waters(原題)』など待機作もいくつかあるようだが、日本で公開されるかはわからないので、楽しめるうちにリオッタのナイスな顔をスクリーンで堪能してほしい。
文/サンクレイオ翼