いちファンから監督へ!マイケル・チャベス監督が振り返る、“死霊館ユニバース”との10年
『死霊館のシスター 呪いの秘密』の前作『死霊館のシスター』は、ちょうどチャベス監督が『ラ・ヨローナ〜泣く女〜』を手掛けているころに制作され、同作よりも半年ほど早く公開された。「広告や予告編で“悪魔のシスター”であるヴァラクを見た時に、すごく象徴的で惹きつけられました。正直に言えば、恋に落ちました。なぜならそれは、ジェームズが生みだした、非常にアイコニックで怪物的なキャラクターだからです」。
さらにチャベス監督は、『死霊館のシスター』がユニバースのなかでいかに革新的な作品だったのかを説明していく。「『死霊館のシスター』以前のユニバース作品は、非常にアメリカ的でした。どれもアメリカが舞台となっていて、それをヨーロッパに移しただけでも刺激的な変化です。さらに大胆に、とても大きな一歩を踏み出した映画になっているのは、(コリン・)ハーディ監督が現地の雰囲気を生かし、おもしろい解釈を作り、限界に挑戦したから。ユニバースの新たな可能性を開いてくれたといえるでしょう」。
ハーディ監督からバトンを引き継いだ今作は、前作から4年後の1956年の物語が展開する。フランスで起きた神父殺人事件をきっかけに、世界中に悪が蔓延。そんななか、イタリアの修道院で慎ましやかにシスターとしての生活を送っていたアイリーンは教会の要請を受けて事件の調査をすることに。人々を救うため、自らの命の危険をかえりみずに祈りを捧げるアイリーンは、ついに悪の元凶である“シスター・ヴァラク”と対峙する。
「大それた英雄のような行為はしたくないというのがアイリーンの本音だけれど、バチカンに呼ばれたら応じるしかない」。チャベス監督は、前作でヴァラクから命からがら生き延びたアイリーンが再び危険な状況にカムバックする経緯を説明する。「1作目にも登場したコンロイ枢機卿が戻ってきたことで、彼女も引き戻される。ヨーロッパ中で事件が相次ぎ、そのどれもがルーマニアを起源としていることから、悪魔が復活したと信じられていた。でもアイリーンはそれを信じていないし、信じたくないと思っている。それは前回と同じような状況になりたくないからだ」。
今回の主な舞台となるのは、南フランスにある聖マリア女子寄宿学校。チャベス監督は前作のハーディ監督と同じように現地の雰囲気を活かすため、1950年代のフランスとスペインの写真を徹底的にリサーチ。作品の世界観にリアリティを与えることに注力すると同時に、南フランスのエクサンプロバンスなどの場所に理想的なロケ地を見つけだした。「これ以上の場所はなかった。まるで過去にタイムスリップしたかのような感覚になる。そのおかげで映画のレベルが格段に上がり、本当に素敵な雰囲気を与えてくれました」。
そして「脚本を練っていた時には、登場人物たちはもう少し広い範囲に広がっていた。けれども寄宿学校に焦点を絞るのが最良の策なのではないかと考えることにしました」と明かし、同じように寄宿学校が舞台となったアンリ=ジョルジュ・クルーソー監督のスリラー映画『悪魔のような女』(55)のような雰囲気を目指したことを告白。「めざといファンならば、きっと本作のなかに散りばめられた小さなオマージュに気が付いてくれることでしょう」。
最後にチャベス監督は、映画館のスクリーンで本作を味わってほしいとアピール。「スリル満点のとてつもなく怖い映画体験になると思います。アイリーンがえも言われぬ悪魔を阻止するために、必死にお化け屋敷と化した寄宿学校にたどり着こうとし、時間との戦いにも挑むミステリー要素もあります。最高に怖くて楽しい、ジェットコースターのような映画を皆さんに体験してもらうことを心から楽しみにしています!」。
文/久保田 和馬