『正欲』でも新境地を開拓!映画ファンを唸らす稲垣吾郎の近年のキャリアを振り返る
ここ数年、映画やドラマ、舞台で多彩な作品に出演し、俳優として好調なキャリアを築いている稲垣吾郎。11月10日(金)には朝井リョウの同名小説を原作とする主演映画『正欲』の公開も控えている。「新しい地図」としてスタートを切って以降、多くの注目作に出演し、時にはイメージを裏切るような役にも挑んできた稲垣。ここでは改めて近年の映画キャリアを振り返っていきたい。
再出発の1作ではセクシーなモテ男ピアニストを怪演
2017年から「新しい地図」としての活動を開始すると、その初期の目玉企画の一つとして取り組んだのが、「新しい地図」が製作を担当した映画『クソ野郎と美しき世界』だ。4つのオムニバス映画で構成される本作で、稲垣は園子温がメガホンを握った『ピアニストを撃つな!』に出演している。
とにかく女性にモテまくる天才ピアニストのゴローを演じると、出演時間こそあまり長くないものの、ピアノを弾く際の指元やキザな表情など、“クソ野郎”をセクシーな魅力たっぷりに表現。稲垣の上品なイメージを彷彿とさせつつも同時に妖しさやユーモアも感じさせる演技でインパクトを放った。
泥臭い姿が新鮮…『半世界』で演じた地方のおっさん
『クソ野郎と美しき世界』と同時期に撮影されていたのが、阪本順治監督の『半世界』(19)だ。とあるインタビューで「一生のうちに、何人の監督と何通りの人生を演じられるのか、そこは欲張りたい」と語っていたように、彼の印象を180度覆すような泥臭いキャラクターを演じ、新境地を開拓している。
本作は、ある地方都市で生きる40歳目前を迎えた3人の男の友情を軸に、市井の人々の営みを描く人間ドラマ。備長炭を製炭する炭焼き職人の紘は、なんとなく日々をやり過ごす人生を送っていたが、かつての同級生が自衛隊を辞めて地元に戻ってきたことを機に生活に変化が訪れていく…という物語だ。
無精髭を生やしたワイルドな見た目の主人公の紘(稲垣)は、頑固な雰囲気を纏った昔気質の親父といったところ。デリカシーのなさから息子にも鬱陶しがられる不器用な男を、荒っぽい口調や横柄な態度などイメージとは真逆の演技で表現。同時にどこか孤独を感じさせる繊細な表情も見せており、地に足のついたキャラクター像は浮世離れ感の強い稲垣だけにとにかく新鮮だった。