『つんドル』の“癒し系おっさん”から『福田村事件』『アンダーカレント』まで、井浦新の活躍に迫る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『つんドル』の“癒し系おっさん”から『福田村事件』『アンダーカレント』まで、井浦新の活躍に迫る

コラム

『つんドル』の“癒し系おっさん”から『福田村事件』『アンダーカレント』まで、井浦新の活躍に迫る

かつてSDN48のメンバーとして活動し、現在は作家の大木亜希子が自身の体験を基に紡いだ小説を映画化した『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』(通称『つんドル』/公開中)。元アイドルにして仕事ナシ、男ナシ、貯金ほぼナシで“人生詰んだ”アラサー女性と、56歳のおっさんとの一風変わった同居生活を描いている。本作でヒロインの安希子を演じたのは、自身も元乃木坂46でのアイドル経験を持つ深川麻衣。そして安希子の同居人であるササポンを井浦新が演じた。

芸能界を引退して企業で働いていた安希子は、ある朝、出社への拒否反応が体に出たことで職を失う。ジリ貧となった彼女は友人の勧めで、都内で一人暮らしをするササポンの一軒家に転がり込むことに。そして家族でも友人でもない気遣い不要のおっさんと穏やかな毎日を過ごすうち、少しずつ生きる力を取り戻していく。

仕事はなく、貯金も尽き欠けていた安希子はササポンというおっさんと同居することに(『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』)
仕事はなく、貯金も尽き欠けていた安希子はササポンというおっさんと同居することに(『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』)[c]2023「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」製作委員会

メンタルをこじらせた安希子の再生をそっとあと押しするササポンを体現した井浦は、このほど釜山国際映画祭とファッション誌「マリ・クレール」が共同主催する「マリ・クレール アジアスターアワード」で「アジアスター賞」を受賞(『福田村事件』)。日本を代表する俳優の一人として、国際的な評価を高めている。そこで今回は、ますます演技力に磨きがかかる井浦の近年の出演作を振り返ってみよう。

ササポンとの暮らしで、安希子は徐々に生きる力を取り戻していく(『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』)
ササポンとの暮らしで、安希子は徐々に生きる力を取り戻していく(『人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした』)[c]2023「人生に詰んだ元アイドルは、赤の他人のおっさんと住む選択をした」製作委員会

『アンダーカレント』でも勤勉&礼儀正しい“見守り男”に

ササポンは優しくて紳士で、ちょっと枯れているごくごく普通のおっさんだ。過度な干渉はせず、適度な距離を保ちながら必要な時だけそっと手を差し伸べてくれるササポンの癒しっぷりはすさまじい。

今泉力哉監督作『アンダーカレント』では、主人公が切り盛りする銭湯に住み込みで働くことになる謎の男を演じている
今泉力哉監督作『アンダーカレント』では、主人公が切り盛りする銭湯に住み込みで働くことになる謎の男を演じている[c]豊田徹也/講談社 [c]2023「アンダーカレント」製作委員会

そんな“見守り男”という特徴は、今泉力哉監督作『アンダーカレント』(公開中)で演じた、謎多き堀という役柄にも通じるところがある。この作品は、豊田徹也のカルト的人気漫画を実写化したヒューマンドラマ。実家の銭湯を夫婦で切り盛りしていた妻のかなえ(真木よう子)は、ある時、夫の悟(永山瑛太)が蒸発してしまい途方に暮れる。そんな時にかなえの前に現れたのが堀。一人住まいとなっているかなえの住居に彼が住み込みで働くことを心配する声もあったが、ササポンと同様に堀は常に勤勉で礼儀正しく、危険な香りはいっさいなし。気持ちが揺れ動いて不安定なかなえの心の支えとなりながらも心の奥底(=アンダーカレント)に複雑な心情を抱える堀を、井浦は誠実さをにじませつつミステリアスに演じきった。



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