ホアキン・フェニックスに憑依!?歴史に名を刻む皇帝が『ナポレオン』にもたらした影響とは
巨匠リドリー・スコット監督とホアキン・フェニックスが、アカデミー賞作品賞に輝いた『グラディエーター』(00)以来23年ぶりにタッグを組んだApple Original Films『ナポレオン』(12月1日公開)。本日11月3日の“文化の日”にちなみ、歴史にその名を刻むフランスの皇帝ナポレオンが本作にもたらした影響を、文化的な側面からひも解いていきたい。
1789年。自由、平等を求めた市民によって始まったフランス革命。マリー・アントワネットが斬首刑に処され国内の混乱が続くなか、天才的な軍事戦略で諸外国から国を守り皇帝にまでのぼりつめた英雄ナポレオン。最愛の妻ジョゼフィーヌとの奇妙な愛憎関係のなかでフランスの最高権力を手に、何十万人もの命を奪う幾多の戦争を仕掛けていく彼は、冷酷非道かつ怪物的カリスマ性をもってヨーロッパ大陸を手中に収めていく。
画面づくりの礎は、あの有名な絵画だった!
かのベートーヴェンがフランス革命後にナポレオンを讃えるために交響曲を完成させたものの、彼が皇帝に即位したことに激怒しタイトルをナポレオンの名である「ボナパルト」から「シンフォニア・エロイカ(英雄)」に書き換えた逸話も。20世紀には彼の軍服をイメージした「ナポレオンジャケット」が流行し、マイケル・ジャクソンをはじめとした多くのミュージシャンが愛用したことも有名で、様々な分野に多大な影響を残してきたことがわかる。
ナポレオンの主席画家だったジャック=ルイ・ダヴィッドの「ナポレオン1世の戴冠式」という絵画は、1804年12月2日にノートルダム大聖堂で執り行われた戴冠式の様子が描かれたもの。貴族出身ではないナポレオンが「国民に選ばれて皇帝になった」ことをアピールするため自ら冠を被った様子が描かれる予定だったが、あまりにも傲慢に見えるということから、ナポレオンがジョゼフィーヌに戴冠するシーンに変更されたと言われている。
本作で撮影監督を務めたダリウス・ウォルスキーは、スコット監督の指示でナポレオンの有名な絵画から画面づくりの影響と指針を求めたと明かしている。その参考の一つとなったのが、現在ルーブル美術館に所蔵されているこの「ナポレオン1世の戴冠式」だ。
「彼は最も記録の多い人物です。戴冠式を描いたダヴィッドの有名な絵画や、後にはドラクロワの作品もありました。時代物の映画を作る時はいつも自然光を使います。レンブラントやカラヴァッジョのように、大きな窓や暖炉、ろうそくといった一つの光源が常に存在し、すべてが美しく見えます。本作ではフロントライトを多用し、ダヴィッドの絵画のようにナポレオンにいつも光を当てています。主人公はより明るく、ほかの人たちは影のなかに潜むのです」。