埼玉がますます誇れるようになる!?愛あるディスにまみれた『翔んで埼玉』を振り返る
事の発端、前作『翔んで埼玉』
ここで、前作をもう一度おさらいしておこう。原作は、「パタリロ!」などで知られる魔夜峰央が、当時住んでいた埼玉県を自虐的に描いたギャグ漫画。これを映画では、埼玉県熊谷市に住む菅原一家が、娘の愛海(島崎遥香)の結納のため、父の好海(ブラザートム)が運転し、妻の真紀(麻生久美子)が同乗する、東京へ向かう車中のラジオから流れる“都市伝説”という形で描いていた。
19XX年、埼玉への酷い迫害が続く東京。東京都知事の息子である百美が生徒会長を務める超名門校、白鵬堂学院に、アメリカ帰りの帰国子女である麗が転校してくる。埼玉県出身者からなる最下層のZ組の生徒を庇う麗に、百美は最初こそ不信感を抱くが、才色兼備な彼にしだいに惹かれ、やがて恋に落ちる。
だが、麗が埼玉県人であることが発覚。百美は埼玉に対する激しい拒絶反応に苦しみながら、麗と共に逃避行の旅に出ることになる。しかし、そのころ、埼玉県より先に通行手形の撤廃を狙う「千葉解放戦線」が侵攻。それがやがて、江戸川を挟んで対立する埼玉VS千葉の全面戦争に発展するが、不正蓄財の発覚で百美の父、壇ノ浦建造(中尾彬)が東京都知事を失脚したのをきっかけに両軍が結束。百美と麗も、伝説の埼玉県人=埼玉デューク(京本政樹)が計画していた「日本埼玉化計画」を開始したのだ。
郷土愛に燃える埼玉県人&千葉県人たち
そんな多彩な人物の様々な想いが交錯する、ちょっぴりややこしいシリーズなので、主要キャラについても紹介しておこう。
●東京都知事の息子で隠れ埼玉県人…壇ノ浦百美
もともとは、都会指数の低い埼玉県人を蔑んでいた。だが麗との出会いを機に「埼玉解放戦線」の一員になり、「日本埼玉化計画」を推し進める。新作では、埼玉の各市を跨ぐ武蔵野線開通に向けての交渉に乗りだすが…。
●白鵬堂学院の生徒たち
トップクラスのA組生徒は様々な暴言で埼玉県人を侮蔑している。一方、埼玉出身者を集めたZ組は隔離され、山田昌子(宮澤竹美)が腹痛を訴えても医務室利用の許可が下りない。下川信男(加藤諒)はその劣悪な環境に甘んじていた。
●帰国子女で、埼玉県人…麻実麗
白鵬堂学院3年A組に転入してきた帰国子女。表向きは東京都民だが、実は埼玉県の大地主の子息。「埼玉解放戦線」のリーダーとして、東京への通行手形制度撤廃を実現。新作では越谷に海を作る計画を実行に移すが…。
●埼玉のため立ち上がる…「埼玉解放戦線」メンバー
麻実麗をリーダーとする、虐げられた埼玉県人解放のために戦う軍団。メンバーには麗の家の住み込みの家政婦、おかよ(益若つばさ)のほか、Z組の下川信男や山田昌子、仲の悪かった埼玉県各市の猛者たちもしだいに参加。
●千葉への差別をなくすため奔走…阿久津翔
壇ノ浦建造の執事だが、実は千葉県出身の阿久津翔(伊勢谷友介)。千葉県への謂れなき差別を撥ね除けるために、「千葉解放戦線」のリーダーとして暗躍。都知事の建造に近づき、埼玉県とは違う形で千葉県の通行手形制度の撤廃を実現させた。
●千葉の誇りを胸に埼玉と激突…「千葉解放戦線」メンバー
阿久津と共に戦う戦闘員には、真っ白な海女さんのコスチュームで貝殻のトランシーバーを持った浜野さざえ(小沢真珠)と浜野あわび(中原翔子)が。新作では麗や「埼玉解放戦線」のメンバーと一緒に関西に乗り込む。
●上流階級オーラを漂わせる埼玉県人…埼玉デューク
伝説の埼玉県人で、麗の父親、宗十郎(麿赤兒)の弟である埼玉デューク。持ち前の上流階級民のオーラで都民の目を欺いていたが、埼玉県人を率いたクーデターを画策している時にSAT(埼玉急襲部隊)に正体を見破られ、姿を消す。
通行手形制度や、地元のため反旗を翻す組織
前作で描かれた時代の埼玉県人は通行手形がないと都内に入れない。手形を持たない埼玉県人を取り締まるSATは、埼玉県人の頭に「さ」のマークが浮かび上がるゴーグルや、撃たれた埼玉県人は痺れてしまうドライヤー型の埼玉銃を持つ。とはいえ、東京人にとって、横浜や鎌倉も湘南エリアを要する神奈川を除く群馬、埼玉、千葉、茨城の関東4県は「ぐんたまちばらぎ」と一括りにされるぐらいどうでもいい県なのだ。
神奈川は高みの見物を決め込み、群馬は秘境扱い。東京と隣接した埼玉県人と千葉県人だけが、迫害されていた反動と強い郷土愛で各々の勢力を拡大しようとしたため、ついに江戸川を挟んだ全面戦争へと発展。原作コミックにはない、この壮大にしてくだらないクライマックスで行われた双方の県の“有名人対決”も大きな話題になった。
埼玉&滋賀両知事もお墨付き!?東西対決に期待せよ!
そして、前作の公開から4年。壮大な茶番劇は西のなにもない県=滋賀県に飛び火して、驚愕の東西対決に無駄にスケールアップ。恒例の“謝罪”PR会見では、百美を演じた二階堂らが、埼玉と滋賀の県知事に「続編を作ってしまい、申し訳ありません」と頭を下げ、その愛すべきディスりで注目が集まることを期待する両県との友好的な関係も印象づけた。
埼玉、滋賀だけでなく、関西各県をディスる小ネタもふんだんに盛り込まれ、関西に舞台を移した“有名人対決”への期待も高まる本作が、日本全土をまたまた爆笑の渦に包み込むのは間違いない!
文/イソガイマサト
※川崎麻世の「崎」は「たつさき」が正式表記