「差別や分断って実はこんなにバカバカしいんだ」GACKT×二階堂ふみ×杏が『翔んで埼玉』続編で感じた“いまの時代に必要な映画”とは
鬼才、魔夜峰央が1982年に発表した原作コミックを実写化し、当初の予想をはるかに超える大ヒットを記録した映画『翔んで埼玉』(19)から4年。続編を待望するファンの声に応え、武内英樹監督をはじめとする前作のスタッフとキャストが再集結して作り上げた禁断の第Ⅱ章『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』が11月23日(木・祝)より、いよいよ公開!
本作は、東京都知事の息子で名門私立高校・白鵬堂学院生徒会長の壇ノ浦百美が、埼玉解放戦線を率いる帰国子女の転校生、麻実麗と出会い、奮闘の末に東京への通行手形制度を撤廃させた前作の後日談。埼玉県人の悲願である、「埼玉に海を作る」ため、仲間と和歌山の白浜に向かった麗が、全国を巻き込む東西対決に身を投じていく。
麻実麗役のGACKT、壇ノ浦百美役の二階堂ふみという二本柱の続投に加え、今回は滋賀解放戦線のリーダーで“滋賀のオスカル”こと桔梗魁役で杏が参戦。物語、スケール、あらゆる面でパワーアップした本作に挑んだ3人が、撮影中のエピソードや本作への思いを語り合ってくれた。
「これ以上はやめましょうとお断りしました。でも、しつこかったんです(笑)」(GACKT)
――続編の話を知ったのは、いつごろだったのでしょうか?
二階堂「2020年1月の日本アカデミー賞発表時期(『翔んで埼玉』は第43回日本アカデミー賞で作品賞をはじめ、最多12部門で優秀賞を受賞)には、監督やプロデューサー、東映さんが『ぜひ続編を!』とおっしゃっていましたよね」
GACKT「実際に2作目を作るという話でオファーが来た時は『これ以上はやめましょうよ』って、お断りしました。でも、しつこかったんです(笑)」
――杏さんがオファーの話を聞いた時の気持ちはいかがでしたか?
杏「武内監督とは以前、月9のドラマ『デート~恋とはどんなものかしら~』でご一緒しており、また一緒にやらせていただきたいなぁと思っていたところだったので、うれしかったです。でも、まさか『翔んで埼玉』とは想像していなくて、すごくびっくりしました。今回演じた桔梗は滋賀解放戦線のリーダーという役どころですが、私は滋賀県出身ではなく、あまり関わりがなかったので、私でいいのかな、大丈夫かな?という思いはありましたね」
――杏さんは『キングダム 運命の炎』にも出演されていますが、すでに世界観が構築されている続編作品に参加する時は、どのようにアプローチされるのでしょうか?
杏「原作のビジュアルがある作品だったら、まずそれを最大限再現したいなと思います。今回みたいに、原作にはないキャラクターだった場合は、設定をちゃんと意識して、その作品の世界にいかになじむかということをすごく心がけています。『翔んで埼玉』も『キングダム』も前作は普通にお客さんとして観ていたので、プレッシャーはもちろんあるんですけど、『この作品に出られるんだ!』という喜びが大きかったですね。今回も最初にGACKTさん演じる麻実麗に会った時、心の中で『あ、麗だ!』って。
「あの顔のくずれ方はなにかで加工したのかな?と思ったくらい」(杏)
――GACKTさんは本作で再び二階堂さんと共演、杏さんとは初共演になりますね。
GACKT「撮影時期は前半に杏ちゃん、後半にふみちゃんという感じでした。ボクは病気から復帰してすぐの撮影で、声の調子が100%戻っていない状態からスタートしたので、前半では、自分はどれくらいできているのかなと不安でした。杏ちゃんとは初めての共演だったこともあって、どんなふうに一緒にやったらいいのかわからなくて。でも後半になるにつれて、調子も戻り撮影にも慣れてきて。ふみちゃんが来た時には安心感もありました。やっと会えたなっていう(笑)」
二階堂「GACKTさんは相変わらず麗しかったです」
GACKT「途中、けっこう顔がくずれてますけど」
――大阪府知事・嘉祥寺晃(片岡愛之助)の陰謀による、特殊な粉を使ったお好み焼きやたこ焼きなどを食べたことで、麗が徐々に大阪人化してしまうシーンですね。
杏「ほんとすごかった。あの顔のくずれ方は…なにかで加工したのかな?と思ったくらい。顔の筋肉だけであんなに変わるなんて…」
二階堂「顔の造形が変わってましたもんね(笑)。もとがかっこいいと、余計におもしろいですよね。GACKTさん、こんなことまでしてくださっていたんだ…っていう」
GACKT「最初はもっと普通にやる予定だったんですけど。それで前日、武内監督に『こういうイメージがあるんだけど、どうですか?』って聞いたら、『現場でやってみましょう!』って言われて。これ、リハーサルするのかぁ…みたいな(苦笑)」
二階堂「やだ、すごい恥ずかしいですね(笑)」
GACKT「実際にやってみたら、武内監督も現場のスタッフも『いや、こっちの方がいいんじゃないですか?』って。冷静な口調で言われるのが、また恥ずかしかった」
杏「台本には書かれていなかったから、完成した作品を観た時にびっくりしました」
二階堂「笑いすぎて、大変でした(笑)。新しいGACKTさんと、新しい麗を見られたなっていう感じですね」
GACKT「ありがとう。光栄です…」
杏「あと、片岡愛之助さん演じる嘉祥寺に、口元についたソースを舐められたりして(笑)」
GACKT「あれも現場でリハーサルをした時に『愛さん、ここはもっとエロくやりましょう。もうちょっとソースつけるんで、舐めてください』って、ボクから提案して。愛さんにも『いいんですか?舐めまくりますけど』とか言われて」
杏「あのシーン、カット尻までずっと舐めていましたもんね。1回じゃ済まないんだと思いながら見ていました」
GACKT「愛さん、すっごい真面目な人で。舐める前に『失礼します』って」
杏「わぁ、紳士なんですね(笑)」
――キャストの皆さんのきらびやかな衣装やヘアメイクも、本シリーズの魅力のひとつです。衣装に関する撮影時のエピソードを教えてください。
杏「私が演じた桔梗は、原作にないキャラクターだったので、ビジュアルはゼロから作っていきました。衣装デザインの柘植伊佐夫さんが、桔梗の衣装には南蛮人のような襟やケープをつけるとおっしゃっていて。私はそこで家紋を入れたいと言ったんです。かつて近江の地を奪おうと、争い合った武将たちの名だたる家紋を入れることで、桔梗が過去の栄光を大事にしていることを出せるかなと思って。そういう話し合いを経てデザインができあがっていきました」
二階堂「百美の衣装は、とても着心地が悪いんですよ(笑)。伸縮性の少ないカーテンみたいな生地だから、ちょっと太ったかも?とかもすぐにわかるし。今回は、1作目の時にGACKTさんが着ていたマントがかっこよかったので、『私もあれが着たい!』とお願いしたんです。それでさらに動きづらくなっちゃって大変でした(苦笑)。でも、マント姿の百美を見せることができてよかったです」
GACKT「ボクは撮影中にパンツが破けることがけっこう多くて。走ったり、動いたりするシーンでは、内股の部分がブワーッと裂ける。これと同じこと、前回もあったよな…なんとかならないものなのかな…って思いながら、最後まで、破けたパンツを縫って、履いて、破いて、というのを何回も繰り返していました」