「差別や分断って実はこんなにバカバカしいんだ」GACKT×二階堂ふみ×杏が『翔んで埼玉』続編で感じた“いまの時代に必要な映画”とは
「差別や分断って実はこんなにバカバカしいんだ」(二階堂)
――本作はいろいろな地域をディスりながらも、その奥には深い“郷土愛”があふれています。GACKTさんと二階堂さんは沖縄出身、杏さんは東京出身ですが、ご自身の出身地にどのような想いがありますか?
GACKT「ボクの故郷はやばい田舎なんですよ。それこそ人の数より山羊の数のほうが多いくらい。うちのスタッフに福岡出身の人が多かった時期があったんですけど、彼らに『出身が福岡で、田舎なんですよー』って言われたんですけど、実際に行った時に、全然都会じゃん!と思って。本物の田舎を見せてやろうか!?と、その後、彼らにボクの育ったところを見せたら、『ヤバいっすね!』って言われて。たまに沖縄出身の人間同士でも、それぞれの地元の話になった時、ボクは鼻で笑われることもあるんですよ、田舎すぎて。
でも、ボクは好きなんですよ、その田舎が。本当に家を出たら、目の前がすぐ海なので。いまの日本に、こんな風景が残っている場所あるか?と思うところもあって。ボクの誇りというか。確かに台風はきついですけど。ちなみに東京と沖縄では、イメージする台風のレベルは全然違います。沖縄は直撃なんで。朝起きると、木の上にボートが引っかかっているという光景が普通なんで。雨戸を突き破って、家の中に木が入ってくるとか。それも含めて沖縄なので。ボクの中では全部良き思い出として残っています」
二階堂「私も沖縄出身ですが、地元が全然違いますもんね。この映画でも、埼玉の大宮と浦和の戦いが描かれていますけど。沖縄も昔はひとつの国だったので、そういうことなのかもしれないなって、ちょっと思ったりしましたね」
GACKT「沖縄って、場所としてはめちゃめちゃ小さいじゃないですか。でも、その小さい中に、たくさん城があって、みんな戦っていたんですよ。こんな小さいところで、なにを取り合っていたんだろうっていうレベルの戦いをやってた。いまだに、その地域ごとでまったく言葉が違ったりして。それこそ宮古島とか石垣島の言葉なんて、なに言っているか全然わからないし」
二階堂「沖縄といっても、北と南で全然違うというのはあるかもしれないですね」
――前作でも、麗と百美が通う高校では、同じ東京であっても赤坂や青山に住む生徒はA組など、“都会指数”のレベルごとにクラスが分かれているという描写がありました。
杏「あと、車のナンバーはどこがいいとか、そういうこだわりも若干聞きますよね」
二階堂「私はいま、代車で大宮ナンバーなんですよ。なんか埼玉を背負っている気持ちになります(笑)」
杏「東京は都会だとか、東京の人は冷たいって言われることもあると思うんですけど、実は意外と人情深かったり、昔ながらの懐かしい暮らしが息づく場所も残っていたりして。緑豊かな公園もありますよね。文化面では、海外アートの展覧会が多かったり、いろんなごはんが食べられたり…そういうところは、東京っていいなと思いますね」
――みなさんは個人的に『翔んで埼玉』シリーズのどんなところに魅力を感じますか?
GACKT「他県の人が観ても、その県に住む人が観ても、こんなのあったんだ…!という発見があるところ。地理の勉強をしても、なかなか頭に入ってこないような知識を、エンタメを通して知ることができる、いいきっかけになるんじゃないのかなって。笑いながら、ディスりながら観ているうちに、自然に覚えていきますから」
杏「ユニークなローカルネタも多くて、『こんなこと、本当にあるんですか?』って、その出身地の人に聞いて、いろいろ教えてもらったりしたのもすごくおもしろかったです。あとは、名だたる人たちが大勢、思わぬところで出演している驚きもありますね。現場では、エキストラさんの衣装すべてが丁寧に作り込まれていたり、のぼり旗ひとつひとつにちゃんとメッセージが書いてあったりするディテールの細やかさにも感激しました。劇中のいろんな仕掛けや小ネタについて、観た人と話して、答え合わせしたくなる。1回観たあと、すぐにまた観たくなる作品だなって思いました」
二階堂「観ているうちに、おおらかな気持ちになれる作品ですね。前作の時にGACKTさんがおっしゃっていた『いまの時代に必要な映画』だという話、本当にそうだなと感じていて。この映画って、差別とか分断とか、そういったものが実はこんなにバカバカしいんだっていうことを、振り切ったディスを使って描いている作品だと思うんです。と同時に、やっぱり純粋に笑える作品でもあって。私もおなかがよじれるくらい笑って、観たあとにちょっと横隔膜が痛くなりました(笑)」
GACKT「映画館に観に行くことの意味、みたいなものを強く感じてもらえる作品なんじゃないかな。自分が笑うところで、隣の人も同じように笑っていて、そのこと自体が映画の印象まで変えてしまう。笑いや感動って、たくさんの人と共有することで、不思議と重層的に増えていくんですよ。多くの方に観ていただいて、たくさん笑ってほしいです。その笑いが入ってこの作品は完成するので」
取材・文/石塚圭子