「『REBEL MOON』は新たな『七人の侍』!」来日したザック・スナイダー監督やペ・ドゥナらキャストが撮影を振り返る
次に注目の俳優陣に話を聞いてみよう。『クラウド アトラス』(12)などのハリウッド作品や是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』(22)などに出演し、国際的に活躍する韓国の人気俳優ペ・ドゥナ。彼女が扮するのは、ライトセーバーのような光剣を駆使する二刀流の使い手で、ヴェルトの救済に協力することになる戦士ネメシス。寡黙でクールなキャラクターだが、パート2ではその悲しい過去も明かされるとのことだ。
「村のセットでは麦を実際に植え、育てて、撮影時には収穫もしているんですよ」
――ザック・スナイダー監督からは、ネメシスという役を演じるうえで、どんなリクエストがありましたか?
「ザックとは撮影前にZoomミーティングでよく話しましたが、ネメシスについては、“こういう背景を持つ、こういうキャラクターなんです”と教えてくれただけでした。撮影の時は、ほぼすべて私にネメシスというキャラクターは預けられていました。演じている時は自分の中から直感的に出てくる表現を重視しました。ザックもそれを望んでいたし、実際に彼は“想像を超える演技だった”と褒めてくれましたよ」
――光る剣を使ったアクションで大変だったことは?
「まず、ネメシスというキャラクターは義手を付けていますが、それは自分で自分の腕を切断して付けたものです。その行為は彼女の復讐心と直結していて、その義手でなければ、あの光剣を操ることができない、という設定になっています。演じるうえでは、これまで武術をはじめ、様々な映画で多くのトレーニングを積んできたので、肉体的にはさほどキツくはなかったのですが、体を低く構える動きが多く、脚には負担がかかりましたね。また、剣の光は背中に装着した装置で発しているので、転がるアクションも大変でした」
――作品の見どころを挙げるとすれば、どんな部分になるでしょう?
「たくさんあります。CGIで作られたキャラクターや、スナイダー監督らしいキレのある描写、クライマックスでのファイトを演じた俳優たちの演技と、挙げればキリがありません。私が個人的に注目してほしいと思うのは、スケールの大きなセットで撮影されている点です。ロサンゼルスに作られたものやオープンセットもありました。砂漠の真ん中に村を作って、そこで撮影もしました。村のセットでは麦を実際に植え、育てて、撮影時には収穫もしているんですよ。こういうリアルセットの背景も含めて、すべてが魅力的だと思います」
「コラが守ろうとしているものは、現代の多くの女性が抱えているものでもある」(ブテラ)
最後は主人公であるコラ役のソフィア・ブテラと、悪役のノーブル提督を演じたエド・スクライン。『キングスマン』(15)の殺し屋役でブレイクしたブテラは、凄腕の戦士だが、どこか陰のあるコラに扮し、こちらも激しいアクションに挑んだ。一方、『トランスポーター イグニション』(15)で知られるスクラインは、マザーワールドから派遣された提督で、残忍極まりない冷血漢ノーブルを怪演している。ペ・ドゥナが見どころとして挙げていたクライマックスのファイトは、彼らが演じたものだ。
――ブテラさんは多くのアクションを演じられていますが、もっとも気に入っているアクションを教えてください。
ブテラ「やっぱり、エドと演じた最後のファイトシーンですね。あの場面はコラの戦いの理由が深いレベルで明らかになるから。彼女が守ろうとしているものは、現代の多くの女性が抱えているものでもあると、私は考えています。この場面はロサンゼルスで夜に撮影しましたが、とても限られた時間の中でスタッフが一丸となって作り上げたシーンであり、その緊張感は画面からも感じとってもらえるでしょう」
――スクラインさんはここまで恐ろしく憎々しい役に挑むのは大変だったのでは?
スクライン「今まで演じてきた役の中でも、もっとも遠いところにいる人物を演じるという点では、やりがいがありました。ノーブルのように恐ろしいキャラクターを演じた経験はないので、俳優としての自分を高めるための教育の場であると感じましたね。それがどこまで成功したかはわからないですが、ロンドンのプレミアで、この映画を見た親友が“今までの仕事の中で最高の演技だった”と言ってくれたのは嬉しかった。俳優の仕事が好きだし、今後も続けていくためには、自分からより遠いところにいる人物を演じることも必要だと思っているんです」
「自分からより遠いところにいる人物を演じることも必要」(スクライン)
――コラとノーブルの、それぞれの戦う理由をどう受け止めましたか?
ブテラ「コラの戦いは基本的に“守る”ためのものです。自分の暮らしている村を守るための戦いであることは明白ですが、自分を守り、弱者を守るための戦いでもある。また、コラには過去の出来事に対する罪悪感があり、つぐないの意識も強い。正しい振る舞いをしたいという思いが、戦いの動機にもなっていますが、それはパート2で描かれるので、ぜひ観てください」
スクライン「スナイダー監督から受けた説明では、ノーブルの父はマザーワールドの元老院議員で、ノーブルをダメな息子と思っているとのことでした。辺境の惑星で反乱者を取り締まっている程度で、大きな仕事はさせてもらえないんです。そういう状況だから、ノーブルはのし上がりたい。父に見直してもらいたい。そんななかで、コラやネメシスといった、重要な反逆者たちを捕らえるという大きなチャンスがめぐってきた。彼は、これを成功させて、元老院にのし上がりたいという野心を抱いているんです」
――お互いの俳優としての魅力を、どう見ますか?
ブテラ「エドは紳士的で優しく、気遣いができる人。これは人としてもアーティストとしても重要なことだと思います。役者として親切で寛容であることは、人としてそうでなければ発揮できない資質です。エドはそれを持っているんです」
スクライン「俳優に必要なのは、神秘性や魅力、ニュアンスの違いの表現など、様々なものがありますが、それらを含めて深みがないといけない。観客は役者を見て、演じているキャラクターについて深く考えるわけですから、奥行きや幅が必要になるんです。そういう意味では、コラを演じたソフィアは、まさに堂々たる役者でした。観客としてコラを信じられるのは、彼女が役に入り込み、全力で真摯に取り組んだからですね」
取材・文/相馬学