ゾクッとする色気と変態性…主人公を食うほどの存在感を放つ、韓国映画の“イケメンヴィラン”
『犯罪都市 THE ROUNDUP』ソン・ソック
ソン・ソックは、「私の解放日誌」での寡黙で謎めいたク氏役で女性視聴者の心を鷲掴みにした直後に、『犯罪都市』シリーズ第2弾となる『犯罪都市 THE ROUNDUP』でヴィランのカン・ヘサンを演じてブレイクした。カン・ヘサンは本能で人を殺す男。邪魔だから殺す、それだけ。彼にとっては何ら特別な事ではなく、息をするのと同じように次々に目の前の人間を殺していく。だが、無感情に人を殺す殺人マシーンではなく、根底では常に怒りを抱えていて、そのスイッチが簡単に入るのだ。悪人オーラが出ているわけでもなく、粗暴な言葉遣いもしない、一見、寡黙な男という印象。だが、眼光だけは鋭く、目が合えば一瞬で「触れたら危険」と緊張させる。
しかし、怖さのなかにどこかセクシーさを感じて「あの目に射られたい」とうっかり思ってしまう女性も多いはず。また、役作りとして10kg増量したが、筋肉美を強調する為に鍛えてバルクアップしたのではなく、食事量を増やして年相応の中肉の男性として体を大きくした。とは言っても、もともと筋肉がしっかりついているだけに、脱いでもカッコいい。ソン・ソックの危険な魅力をぜひ体感してほしい。
『バレリーナ』キム・ジフン
バレリーナの友人を殺された女性の復讐劇を描くNetflixオリジナル映画『バレリーナ』で、キム・ジフンは“女性の敵”チョイを演じている。次々に女性をナンパして、こっそりセックスムービーを撮り、それをネタに脅した挙句、監禁、殺害、というド変態のクソ男だ。これがその辺のブサイクだったら、単に「キモチワルい!」で終わってしまうが、イケメンのキム・ジフンが演じる事で、自分だったらついていってしまうかも…と思い、他人事ではない怖さを感じさせる。
キム・ジフンは「私はチャン・ボリ!」や「金持ちの息子」などでは明るくポジティブなイケメンとして女性を胸キュンさせたが、悪役になるとあの二重で魅力的な目にドロッとしたオーラが宿り、一気に気味悪さを醸し出す。今作では「あの人、カッコいいけどなんか気持ち悪くない?」と囁かれるようなヤバい男を見事に体現し、“キモイケメン”という新たな一面を確立した。
『毒戦 BELIEVER』キム・ジュヒョク
麻薬取締官が正体不明の麻薬王を追って麻薬の巣窟に潜入し、数々の狂人たちと激闘を繰り広げる大ヒット映画『毒戦 BELIEVER』で、闇マーケットの王・ハリムとしてレジェンド級のヴィランを演じたキム・ジュヒョク。超ド級のヤバさで「ホジュン~伝説の心医~」や「武神」での誠実でまっすぐな雰囲気や、バラエティー番組「一泊二日」での優しく愉快な印象を見事にぶっ飛ばした。
ボクサーパンツにガウンを羽織り、胸をはだけさせてボサボサ髪で登場した瞬間、画面を突き破るような圧倒的な存在感で文字通り彼に釘付け。他の出演者はいっさい目に入らなくなるほどだ。クスリ漬けで焦点が合ってないが獲物を絡めとるような目つきで縮み上がるような恐ろしさ。退廃的なオーラが充満し、“ヤバい男のセクシー”の究極の正解を見たと思った。同じくヤク中のイカレた妻との獣のような荒々しく生々しいキスも必見。新たな一面を見せ、今後の作品に期待が高まるなか、今作の撮影後に交通事故で帰らぬ人となり、これが遺作となった。彼の最期の最高の怪演を是非目に焼き付けてほしい。
文/鳥居美保