トーキング・ヘッズが目の前にいるような臨場感!4Kで甦った『ストップ・メイキング・センス』は極上の映像環境で体感すべし!
映画館にいることを忘れて踊りだしたくなるグルーヴ感
シンプルな照明の下、能楽の衣装からインスパイアされたビッグスーツを纏い、ヘンテコなダンスで熱唱するバーンはもちろんだが、「LIFE DURING WARTIME」などで自由に見える動きで演奏をするバンドのメンバー。まるでアドリブのように見えるものの、一瞬たりと気を抜かない完璧な振り付けで構成されたステージングであることは、後半に行くにつれてわかるはず。また、バーンが当時、ワールドミュージックのグルーヴに影響を受けていただけに、呆れるほどのドライブ感があるアレンジが施された「LIFE DURING WARTIME」や「ONCE IN A LIFETIME」などは、映画館にいることを忘れて踊りだしたくなるだろう。それゆえに、できる限り音響・映像の優れた劇場での鑑賞をおすすめする。
40年以上も前の映像とは思えない!ライブを目の前で見ているような感覚に
映像の美しさ、会場となったL.A.のパンテージ・シアターにいるような音響デザイン。それだけではなく、40年以上も前に撮影されたライブとは思えない革新的なステージング、いまあるロック&ポップの源流とも言える楽曲群、それをベストな画角に収めたカメラと編集の妙などなど。どれをとっても最強。過去のコンサート映画や音楽ドキュメンタリーは、まるでタイムカプセルを開けたかのようなノスタルジーを感じるものがほとんどだが、この作品に関しては目の前でいまのロックスターが披露するパフォーマンスを観ている感覚になる。
デイヴィッド・バーン、もしくはトーキング・ヘッズを知らない、いまの音楽シーンを好きな若い世代にこそ観てもらいたい貴重なアーカイブといえる。本作の制作背景や4K化の苦労話(版権の複雑な移行や紛失したネガやオーディオトラックの発見エピソードなど)、A24による再リリースの理由に関しては、トロントでのお披露目以降、情報が出尽くしているので、鑑賞前でも後でもチェックしてもらいたい。
文/よしひろまさみち