テーマパークのアトラクションに近いノリのオモシロ怖い『変な家』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、変わった“間取り“に隠された人間の闇をあぶりだすミステリー、砂の惑星“デューン“と主人公ポールを巡る宇宙戦争を描くSF超大作第2弾、現代に蔓延る社会問題によって引き起こされる悲劇を描くサスペンスの、主演の熱演が光る3本。
小説とは違う視覚に訴える仕掛けが随所にちりばめられている…『変な家』(公開中)
白い仮面をつけた謎のクリエイター、雨穴が自らの人気動画から書き下ろした同名小説を、『エイプリルフールズ』(15)などの石川淳一監督が映画化した奇想天外なミステリー。オカルト専門の動画クリエイター、雨宮とミステリー愛好家の変人設計士、栗原が、ある家のどこか奇妙な間取りについて検証していく。だが、やがてその家の側で死体遺棄事件が発生して…。
雨宮に扮した間宮祥太朗と栗原役の佐藤二朗の時にクスッと笑えるやりとり、間宮が実際にカメラを回した生々しい動画に引き込まれるように、観客も彼らと一緒に不可解な事件の当事者になっていくところが本作の面白いところ。川栄李奈が物語の鍵を握る女性をいつもと違う雰囲気で演じているのも注目ポイントだが、小説とは違う視覚に訴える仕掛けが随所にちりばめられているのも楽しい。特に原作にないクライマックスの表現は気持ち悪いと思う人もいれば、笑っちゃう人もいるに違いない斬新なもの。オモシロ怖いそのノリはテーマパークのアトラクションに近いものなので、たくさんの友だちと一緒に観に行って、推理をしたり、ザワザワしながら観るのがオススメ!最高に盛り上がれるはずだ。(映画ライター・イソガイマサト)
スクリーンでこそ真価を味わえる体感的な画作り…『デューン 砂の惑星PART2』(公開中)
時代を超えて親しまれてきた世界的ベストセラーを映画化した超大作。父を殺され砂漠の民フレメンに助けられたアトレイデス家の少年ポール(ティモシー・シャラメ)は、過酷な修練を経てたくましい戦士に成長。宿敵ハルコンネン家や皇帝に立ち向かう。銀河の文明を支える貴重な資源を生みだす“デューン”こと惑星アラキスをめぐる争いを描く2部作の完結編。
前作ではアラキスの特殊な環境や各勢力の確執が重厚な映像で綴られていたが、いよいよ今作ではポールが救世主として覚醒。人々の解放とアトレイデス家復興のため、壮大な戦いに挑む姿が描かれる。激しいアクションやスペクタクル、波乱の人間ドラマなど約180分間見せ場の連続。幻想的なアラキスの景観など、スクリーンでこそ真価を味わえる体感的な画作りも圧巻だ。注目したいのは、他者との共生や自然と人の関わりといったメッセージ。一級のエンタテインメントであるのはもちろん、時代性あふれるテーマこそ本作をいま見るべき映画にしているのだ。(映画ライター・神武団四郎)
監督の堅い決意が胸に響く…『ビニールハウス』(公開中)
非行で保護施設に入所中の息子、認知症の悪化で入院中の母の介護に悩みながら、老夫婦の介護で生計を立てている女性ムンジョン。社会的な問題を主人公に集約させながら、あくまでも「サスペンス映画」として見せようとする新人監督イ・ソルヒの堅い決意が胸に響く。
身動きがとれないほどの困難を打開しようともがく人物の物語は、体に不自由を抱えた高齢者との関係が『ポエトリー アグネスの詩』(12)、貧困の象徴としてのビニールハウスが『バーニング 劇場版』(19)と、名匠イ・チャンドン監督の作品を思い出させる。「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」などのドラマで知られてきたキム・ソヒョンが体一つで役に近づき、リアルでありながらも映画的な人物になりきっている。自身と妻の介護を彼女に任せる盲目の男性に扮したベテラン、ヤン・ジェソンの演技もすばらしい。(映画ライター・佐藤結)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼