視覚と聴覚を越えた戦闘体験!MX4Dで観た『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』はすごかった
ドラマパートで効果を発揮する“匂い"の演出
オープニングの戦闘シーンから4Dらしい演出をじっくりと味わえるが、それ以外にも細かいポイントでじっくりと没入感を味わえるポイントがある。その代表とも言えるのが、ファウンデーション王国への入国シーン。アークエンジェルとミレニアムがファウンデーションの港に向けて着水するシーンでは、ミレニアム側の操艦はまだ不慣れなせいかちょっと揺れて描かれるのだが、一方のアークエンジェルはベテラン操舵士のノイマンによる操艦でスムーズに着水する。その“揺れ”の差がしっかりと振動として表現されているのには驚くばかりだ。もちろん着水時の臨場感は、水がかかる形でも演出されている。
こうした振動だけではない4Dならではの演出は、ドラマパートでは“香り”で効果を発揮する。ファウンデーション王城内の晩餐会で、一緒にダンスをした後に庭園に向かうラクスとオルフェ。一面にバラが咲き乱れ、そこでラクスにオルフェが一輪のバラを差し出すシーンでは、バラの香りが立ちこめる。そして、このバラの香りは、ブラックナイトスコードが特殊能力を駆使して相手の精神に影響を与えるシチュエーションや、劇中で恋愛に関係するシーンなどの演出にも使われている。
もう一つ振動の演出として印象的なのは、“衝撃”を受けるシーン。モビルスーツの戦闘シーンでは、背後に攻撃を受けるシーンがいくつか登場するのだが、シートの背部に取り付けられた振動機構によって、ライジングフリーダムの背部ウイングが破壊されるシーンや、キラがアスランに殴られるシーンなどでも効果を発揮。攻撃をする側だけでなく、ダメージを受ける側の印象も高めてくれる。このダメージ振動効果は、視覚情報以上にキラが苦戦する厳しい状況を体感しているような気持ちになる。そして、ダメージの振動はより大きな“衝撃”も強調してくれる。物語の中盤でのアークエンジェルの撃沈シーンでは、動力を失い胴体着陸する際にマリュー艦長の「衝撃に備えて!」の言葉の後に味わう大きめの振動が、“戦艦の最期”をより臨場感のある形で体感することができる。
また物語のクライマックスで、ファウンデーションの旗艦にミレニアムが衝角「轟天」で攻撃をするシーンでも、再びマリュー艦長による「衝撃に備えて!」の言葉の後に座席が大きく揺れる。しかし、ここではアークエンジェルの撃沈シーンと異なり、勝利に向けた一撃として、シートの揺れが劇中における重要シーンの“衝撃”をより大きな印象として残してくれるのだ。
クライマックスは4D演出のつるべ打ち!
これらの4D演出は、クライマックスの戦闘シーンで最高潮を迎える。キラ、アスラン、シン、ルナマリアたちに代わる代わるスポットが当たる戦闘シーンでは、ここまで紹介してきた4D演出のつるべ打ち状態。目まぐるしく変わるシーンに応じて、シートの演出も激しさを増していくが、物語のテンションと共に感じる4D演出の数々は一つ一つの戦いをより印象深くしてくれるように感じる。激しい4D演出を味わって迎えるエンドロールは、まさにキラたちと共に戦いを終えたような感覚が味わえるだろう。
筆者は、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』を通常上映とドルビーシネマに続いてMX4Dを体験したが、ドルビーシネマ版は通常上映と比較して映像としての解像度が高くなった印象を持った。それは、音や映像というもとからあったものがより高精細になった結果であり、客観的な視点から映画全体を楽しんだという感覚だ。一方のMX4Dは、映像や視覚に加えて、振動や光、香りといった追加要素によって、劇中のキャラクターにより近い視点で映像に没入し、主観に近い形で作品全体を楽しんだ印象が残っている。そういう意味では、MX4Dで観る『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』は、まさに作品を“体感”すると言えるものだった。
通常上映で作品を理解したファンが、リピートするにあたってより深く作品を楽しみたいのであれば、ぜひ4D上映で『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の世界に没入してみてほしい。
取材・文/石井誠