「クジラの子らは砂上に歌う」梅田阿比が『デューン』の世界を表現!「“砂漠”はどの文化圏の人たちにも根源的な憧れがある」
「『デューン』を“架空の世界”として終わらせない、強いこだわりを感じました」
――今回のイラスト制作にあたり前作を観直されたそうですが、改めて『DUNE/デューン 砂の惑星』を観た感想をお聞かせください。
「圧倒的なクオリティでびっくりしました。設定等のわかりやすい説明はなかったのですが、その作りのおかげか、どのシーンを切り取ってもチープな部分がなく、最初から最後まで世界観に没頭することができました。映像作品の作り方には詳しくはないのですが、表面的にだけビジュアルを凝ったものにしてもあのリアリティは出せないのでは…と。いろんな計算の上で成り立っている没入感なのだと感じました」
――梅田阿比先生の代表作「クジラの子らは砂上に歌う」とは、砂に覆われた世界が舞台という点で共通します。ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督を中心に作り上げられた“砂の世界”はどのように映りましたか?
「砂の世界が実際の砂漠で撮影されたと知って驚きました。水が豊かな惑星カラダンの場面からアラキスの場面に切り替わると、砂の世界の過酷さが際立っていたのですが、物語が進むにつれて先住民たちが住む命のある世界に見えてきます。“架空の世界”として終わらせない強いこだわりを感じました」
「レディ・ジェシカは登場人物の中で、一番複雑な内面を抱えている」
――印象に強く残ったキャラクター…描いてみたいと思われるキャラクター(クリーチャー、メカニック含む)などもいましたら教えてください。
「漫画で描くとしたら楽しそうなのは、ダンカン(ジェイソン・モモア)と、ポールのお母さんのレディ・ジェシカです。ダンカンはフレメンたちに馴染んでしまっているところがチャーミングでよかったです。アクションシーンもかっこよかったのですが、退場してしまって悲しかったですね…。レディ・ジェシカは登場人物の中で一番複雑な内面を抱えていると感じました。リアルで強い女性像は好きですし、『PART2』での描かれ方も楽しみです。なかなか全貌が見えないサンドワームの描写はまさに自然そのもので、圧倒的存在感でした。登場する宇宙船も美術品のようで見入ってしまいました。一番気に入ったのはアラキスの邸宅にあったサンドワームの壁画?です。大きすぎて絶対無理ですが、そのまま部屋に飾りたいくらいかっこいいです!」
――特に心に残っているシーンはありましたか?
「地味なチョイスかもしれませんが、ポールたちが飛行艇でアラキスの都市に向かう時に、なめるように街を映すシーンがあって…。アラキスの都市はこんなデザインなのか、と興奮しました。造形的にもおもしろかったのですが、アラキスの気候の厳しさを考えるとリアリティのあるデザインなんだとわかって感嘆しました」
「ティモシー・シャラメ演じるポールの、決意の瞳や表情の強さにグッときました」
――主演のティモシー・シャラメのほか、ゼンデイヤ、オスカー・アイザック、レベッカ・ファーガソン、ジョシュ・ブローリン、ジェイソン・モモアなどなどそうそうたる顔ぶれがそろっています。気になった俳優はいましたか?
「やはりティモシー・シャラメがすてきでした。線が細くてクラシックな美しさがあるので、どちらかというと惑星カラダンの中世風の雰囲気にマッチしていたと思います。アラキスに着いた時はポールの美しさと自然環境の過酷さとのギャップで心配になってしまったのですが、それを含めてのキャスティング…?PART 1のラスト付近でフレメンたちとアラキスに残ることを決意した時の瞳や表情の強さには、グッときました」