ノミネート基準、受賞発表方法など…長い歴史のなかで変わり続けてきた「アカデミー賞」
「作品賞」をめぐるノミネートのあれこれ
部門だけでなく、ノミネート資格や選出方法などレギュレーションも細かく変更されているアカデミー賞。2020年には一部の選りすぐりメンバーで構成される執行委員会によって行われていた「国際長編映画賞」のノミネート最終選考員が公平ではないという理由から、条件をクリアした全アカデミー会員にまで拡大されるなど、各セクションでなにか問題点が見つかれば、常々、改善策が施されてきた。
なかでも「作品賞」は、アカデミー賞の“最高賞”ということもあり、ほかの部門に比べ、より頻繁にレギュレーションの改善が行われている印象だ。例えば、ノミネート作品の本数に目を向けてみるとよくわかる。
「作品賞」のノミネート作品数は、第17回から長らく5本で固定されていたが、2009年、評価の高かった『ダークナイト』(08)が作品賞候補から漏れたことに批判が集まると、翌2010年に催された第82回ではノミネートが一気に10作へと拡大。
また第84回には、会員の投票の5パーセント以上の得票率を得た作品から5〜10本を選ぶ変動制を導入すると、さらに第94回からは再び10本で固定と目まぐるしく本数が変化してきた。本数の増加に伴い、第82回から作品賞の投票方法も改善され、1作品を選ぶのではなく1位、2位、3位...と順位を付けていく優先順位付投票制に変化した。
多様性の実現を目指す近年の取り組みとは?
そんな作品賞をめぐるトピックのなかでも最も大きい動きが、ノミネート資格に「多様性」に関する条件が設置されたことだ。2016年、俳優部門で有色人種が1人もノミネートされなかったことから、授賞式のボイコットなどが起こった、いわゆる“#OscarsSoWhite”ムーブメント。
この非難を受け、映画芸術科学アカデミーは、高齢の白人男性ばかりだったアカデミー会員における女性、有色人種の割合を増やすなど偏りの是正に努めており、先述の「作品賞」10本固定もその策の1つ。そして最たる取り組みが「多様性」に関する新基準の設置だ。
ざっくりいうとノミネートのためには「テーマや物語、主要キャストなど映像に現れるもの」「製作スタッフにおけるリーダー」「有給インターンなどの雇用」「配給・宣伝・マーケティング」の4カテゴリーのうち2つ以上で、性別・人種・性的マイノリティ・障がい者といった少数派グループを含む必要があるという条件だ。2020年に発表され、いよいよ基準が適用されるのがまさに今回の第96回からとなる。
さらに来年の作品賞の対象条件として、これまで以上に”劇場公開”を重視した内容となり、NetflixやApple、Amazonといった配信系作品にとってはより劇場公開に力を入れないといけなくなる模様。今後も様々な条件が加わっていくことになりそうだ。
その絶大なる影響力を活かし、誰に対しても公平な映画業界を作り、よりよい作品を生みだすために、時代にあわせて絶えず変わり続けてきた「アカデミー賞」。それまでのやり方を変える際はなにかと批判がつきものだが、変化をポジティブに受け止めたいところだ。
文/サンクレイオ翼