【第96回アカデミー賞】脚色賞は前哨戦を制した『アメリカン・フィクション』、コード・ジェファーソン監督は「人生が変わった」
現地時間3月10日(日本時間3月11日)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催中の第96回アカデミー賞授賞式。脚色賞は、前哨戦で絶好調だった『アメリカン・フィクション』(Amazon Prime Videoにて独占配信中)が受賞し、脚本を手掛けたコード・ジェファーソン監督が喜びを炸裂させた。
本作はパーシヴァル・エヴェレットの小説「Erasure」を原作にした風刺的なブラックコメディ。売れない作家セロニアス・“モンク”・エリソンは、新作の原稿が「黒人的ではない」という理由から出版社に受け入れてもらえない。対照的に白人社会の求める黒人像に迎合した作品を書く若手作家が人気を集める現状を不服に思った彼は、あらゆるステレオタイプを詰め込んだ小説を別人のペンネームで出版するが、図らずもそれが大ベストセラーとなってしまう…。
コード・ジェファーソン監督は「皆さん、ありがとうございます!本当に大きな意味のある受賞です」と感無量の表情を見せ「2億ドルの作品はリスクを伴いますが、もちろんもっと安い予算、400万ドルの映画もあります。いろいろな映画がありますが、本作は多くの方々が作品に携わってくれて完成しました」と感激しきりだ。また、マーティン・スコセッシ、グレタ・ガーウィグ、クリストファー・ノーラン監督など、自身がリスペクトする監督の名前を挙げて映画への熱い想いを口にし「人生が変わりました。皆さんに感謝します。私に本作を監督をするチャンスをくれてありがとうございます」と心から感謝した。
Netflixシリーズ「マスター・オブ・ゼロ」やHBOテレビシリーズ「ウォッチメン」にストーリーエディターとして参加し、才覚を発揮してきたコード・ジェファーソンが本作で長編映画監督デビュー。パーシヴァル・エヴェレットによる2001年の小説を脚色した本作で、見事受賞を果たした。
主演はダニエル・クレイグ版「007」シリーズのフェリックス・ライター役などを務めたジェフリー・ライト。第96回アカデミー賞では、作品賞と主演男優賞、助演男優賞、脚色賞、作曲賞の5部門にノミネートされた。
アカデミー賞の前哨戦としてはかなりポイントが高い昨年のトロント国際映画祭での観客賞を受賞した話題作『アメリカン・フィクション』。その後、全米各地の批評家協会賞でも数多くの賞に輝いた本作が、その勢いのまま、見事オスカーを獲得した。
文/山崎伸子