『オーメン:ザ・ファースト』監督が語る、ホラー映画の“金字塔”への挑戦
「第1作がいまなお古びないのは、権威に対するあからさまな不信感があるから」
『オーメン:ザ・ファースト』の主人公は、修道女になるためローマの教会へとやってきたアメリカ人修練生のマーガレット(ネル・タイガー・フリー)。同じように奉仕に勤しむカルリータ(ニコール・ソラス)と出会い、彼女と過去の自分を重ね合わせるマーガレットだったが、周囲で不審な連続死が発生。そんななか、教会から破門されたブレナン神父(ラルフ・アイネソン)から“悪の化身”を誕生させようとする教会の企みを知らされたマーガレットは、その母として利用されようとしているカルリータを救いだそうとする。
「この映画は内容やストーリーの性質上、女性の身体の自立性について語っています。同時にホラー映画たらしめる部分は、ボディ・ホラーであり、身体への侵害からきているといえるでしょう。このようなイメージを通して身体を探求することは非常に興味深いことです。なぜなら『この痛みを私たちに与えているのは誰なのか?』ということを再認識させてくれるからでしょう」と、スティーブンソン監督は本作のもつ大きなテーマについて言及する。
「組織にしろ人にしろ、権力の追求というものはその周囲の人々に影響を及ぼす。その多くの場合、女性たちが矢面に立たされ重荷を背負い、その追求の影響を受けることになります。だから観客の皆さんは、心と身体と魂が不安定になっている主人公の姿を見ることになるでしょう。そしてあまり深くは言えませんが、誰かを不安定にさせればさせるほど、その人を利用しやすくなるものです」。そう語りながら、具体的にそのようなテーマが表出している部分として出産シーンを例に挙げる。
「劇中には出産シーンがいくつかあります。私たちはシーンをよりしっかりとしたものにするため、女性の声や息づかいをサウンドデザインやスコアに多く取り入れています。そうすることで、女性の身体について強く意識することができる。そのような意図をもって作りあげました」。
そして最後にスティーブンソン監督は、第1作の『オーメン』を「斬新で生々しく、限界に挑戦した映画であった」と称え、その前日譚をこうして現代の観客たちに向けて作りだしたねらいに触れる。「当時作られた映画の多くに共通していて、かつ私がとても気に入っているのは、組織や権威に対するあからさまな不信感があることです。それこそが、本作がいまなお古びない理由なのです。それらのテーマは変わっていないどころか、かえって悪化しているだけなのですから」。
構成・文/久保田 和馬