ゆりやんレトリィバァ「冒頭から『なにをしてんねん!』ってビックリ」鶴田法男監督&野水伊織と『オーメン:ザ・ファースト』の魅力を語りつくす!
「ショッキングなシーンでも不快感がないのは、監督の背景も影響しているのかなと」(西川)
西川「本作で印象的だったシーンはありますか?」
鶴田「マーガレット役のネル・タイガー・フリーが途中から僕が監督した『リング0 バースデイ』の(主人公を演じた)仲間由紀恵さんに見えてきちゃって(笑)。いま、皆さんといろいろ話しているうちに、『リング0』の制作当時を思い出していました。怖い作品だけど、ネルさんの芝居をきっちり、じっくり撮っているのがものすごく印象的です。スティーブンソン監督が彼女のことを魅力的に見せようしているのが感じられます。きれいな姿で登場するのに、後半にはとんでもないことになってくる…。若干の特殊メイクはしているけれど、いわゆるCGというわけではない。彼女の芝居で見せていくという気概を感じてグッときました」
西川「アルカシャ・スティーブンソンは女性監督で、驚くべきことに本作が長編初監督なんです。元々ジャーナリストだったそうです」
野水・ゆりやん「へー!!」
西川「よくあるホラー映画とはちょっと違う。結構ショッキングなシーンも多いけれど、そこまで不快感がないのは、スティーブンソン監督のそんな背景も影響しているのかなと」
野水「これまではダミアンにフィーチャーしていましたが、今回はもっとマタニティホラーの要素がありました。女性ならもしかしたら嫌悪感を抱いたり、やめて!という気持ちになるんじゃいかなって。でも、確かに西川さんがおしゃったように、ゴシック要素というか、きれいな感じは保ったままで、生々しさがそんなにない。すごくバランスがいいなと思いました。と言いつつ、ホラー映画好きが『いいわー!』って思えるところもたくさんあって(笑)。76年版への死に方のオマージュもありつつ、悪魔の子の誕生を阻もうとする人たちが、惨たらしく死んでいくシーンはパワーアップしているように感じました。そこも見どころだと思います」
ゆりやん「ですよね。冒頭から『なにをしてんねん!』ってビックリしました」
野水「“予兆”がありますよね」
西川「ガタガタガタ!!みたいな」
野水「これは!ってなる映し方ですよね」
ゆりやん「だから最初から引き込まれたし、もちろん最後までずっとなんですが(笑)。忘れられないシーンもたくさんあります。
西川「映画監督目線で見た演出的なポイントというのは?」
鶴田「先ほども少し触れましたが、ジャンプスケア的なものではなく、本当に役者の芝居で怖がらせるとういこと。主演のネルだけでなく周囲の人たちの芝居もきっちり抑えているところはすごいと思います。ホラー映画を怖く見せるための基本は、化け物とか怖いものが出てくるから怖いのではなく、それに遭遇した人たちのリアクションをどれだけリアルに描くかが重要。僕がやってきたJホラーでは、幽霊など得体の知れないものを描きます。そのわけのわからないものに出会った人たちのリアクションをどれだけきっちり描くのかがポイントになります。この作品に関して言うと、それなりに残酷なシーンはあるけれど、周りにいる人たちの芝居をきっちり撮っているので、すごくレベルの高い作品になっていると思います」
西川「いままでの監督とは目線が違う、ジャーナリストっぽいところを感じたりしましたか?」
鶴田「端役の芝居までしっかりフィーチャーして演出しているという意味では、ものすごく細かいことをやっている。単なるホラーではない。ホラーだけどちょっと一段アップしている感じはあります」