『貴公子』でスクリーンデビューしたキム・ソンホ。名匠と組んだアクションシーンは「一生心に刻まれる」
「パク・フンジョン監督が自分が持つ以上の演技を引き出してくれた」
今回、韓国ノワール界の名匠の仕事ぶりを間近で見たキム・ソンホ。その魅力をどう感じたのか。
「パク・フンジョン監督のアクションシーンの演出は、とてもスピード感のあるもので、ある意味、リアルに描かれるアクションだと思いました。実際に息遣いが聞こえ、演じている俳優たちがアクションをするなかで本当にくたくたになって疲れていくような部分までもスクリーンの中に取り込んで緊迫感のあるものにする。だから、観客が目を離せなくなってしまうんだと思いました」。
さらに「やはりノワールの雰囲気を作り出す手腕は、本当に卓越していると感じました。たとえば、会話のシーンであっても、とてもインパクトがあり、緊張感を漂わせる演出をなさる監督だと思います。だから、スクリーンの中にいる俳優たちが自分が持っている以上の力量を発揮できる。僕自身も監督によって、自分が持つ以上の演技を引き出していただいたのではないかと思っています」とも続ける。
2009年に舞台でデビューし、演劇界のアイドルとして抜群のルックスと確かな演技力で人気を誇っていたキム・ソンホ。16年からドラマにも進出し、映画へと幅を広げてきた。そしてデビュー作となった本作では第59回大鐘賞映画祭で新人賞を受賞、さらには、来たる5月7日に開催される韓国のゴールデングローブ賞こと、百想芸術大賞で映画部門の新人賞にノミネートされている。
「賞をいただけたのは、先ほども言いましたが、パク・フンジョン監督の卓越した演出のおかげです。監督の演出によって、僕を輝かせていただいた。また共演者やスタッフの方たちのおかげでもあります。たとえば、マルコ役のカン・テジュさんとは飛行機の中で顔合わせるシーンが初めてでしたが、演技を合わせた時に、『これから一緒に撮っていく撮影が本当に楽しみだな』と感じたことを覚えていて。彼とはとても素敵な撮影ができました。今の気持ちを率直に言えば、本当に幸せで、とても記憶に残る現場になり、一生、このことは心に刻まれていくだろうと思います」。
キム・ソンホにとっていろんな思いの詰まった本作だが、見どころについてこう語る。
「この映画は決して難しい作品ではないんです。緊張感もありますし、スリルもあればサズペンスもあり、迫力もある映画になっています。でも、その合間合間にさまざまなウィットがちりばめられていて、本当に気楽に楽しめる作品です。ぜひ軽い気持ちで見ていただければと思います」。
「『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を観て、福士蒼汰さんのファンになった」
この取材は4月、日本でのファンミーティングを控える直前に行われたものだった。いくつか日本についての質問をしたなかで、日本の映画やドラマで好きな作品、あるいは共演してみたい俳優について尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。
「福士蒼汰さん主演の『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』を観たのですが、この作品で彼のファンになったんです。将来、もし機会があったら、ぜひ作品でご一緒してみたいですね」という。また、「日本語の勉強を始めたところなんです」と明かしたキム・ソンホ。「日本に行ったら、実際に街を歩いて、日本の皆さんがどんな話をしているのか、聞いてみたいと思っているんです…。でも。この取材中、日本の皆さんの言葉がほとんど聞き取れず困惑しています(笑)」と茶目っ気たっぷりに語った。
次回作はパク・フンジョン監督と再びタッグを組んだドラマ「暴君」。全4話からなるドラマで、『楽園の夜』(21)や「私たちのブルース」の名優チャ・スンウォンと共演し、2024年下半期にディズニープラスで配信も決まっている。「『貴公子』とは全く異なるキャラクターですので、期待していただけるとうれしいです。僕としては『貴公子』に続いて、『暴君』も公開されると思うと、今から心臓がドキドキしているんですよ」と締めくくった。2024年、波に乗り、勢いを増していきそうなキム・ソンホ、その笑顔で世界を席巻してほしい。
取材・文/前田かおり