「愛の不時着」超えの視聴率記録を達成!話題の夫婦ドラマ「涙の女王」で“泣きの天才”キム・スヒョンが多彩な魅力を発揮
こじれまくって関係が冷え切った夫婦の再生を陰謀や不治の病を絡めて描く「涙の女王」
本格的な復帰作となったのは、 “サイコパス”の童話作家と介護士の恋を描いた異色のヒーリングラブストーリー「サイコだけど大丈夫」(2020)。キム・スヒョン演じるムン・ガンテとソ・イェジ演じるコ・ムニョンの恋模様だけでなく、自閉症スペクトラム障害を抱える兄サンテとの兄弟愛に加えて、ミステリー要素もあるなど見どころ満載。特に「椿の花の咲く頃」(19)などで知られる名バイプレーヤー、オ・ジョンセ演じる兄サンテとの絆のドラマでは泣かされっ放し。人生を諦めていたようなガンテが次第に生きる道を見つけていく姿には胸が熱くなるほどで、スヒョンの説得力ある演技に見惚れてしまう。さらに、英国BBCのドラマ「Criminal Justice(原題)」をリメイクした「ある日~真実のベール」(21)ではサスペンスに挑戦。一夜にして殺人事件の容疑者になった大学生が拘置所で壮絶な事態にさらされていくことになる。韓国の司法制度の問題点を投げかけた内容と共にキム・スヒョンの迫真の演技も高く評価された。
そして、3年ぶりの連続ドラマへの出演となった「涙の女王」。脚本家が「愛の不時着」を手掛けたパク・ジウンであることから前評判が高く、キム・スヒョンとは「星から来たあなた」「プロデューサー」に続く3度目のタッグで、彼の魅力を生かすことにかけては右に出る者なし!そう考えると、今回演じるペク・ヒョヌの頭脳明晰で文武両道のデキた男でイケメンという設定は、「星から来たあなた」のト・ミンジュンを彷彿とさせるようなキャラクターだ。
物語は、そんな彼がキム・ジウォン演じる財閥クィーンズグループの3代目を継ぐ“デパート業界の女王”ホン・ヘインと恋に落ち、周囲の反対を押し切って結婚。にもかかわらず、3年目を迎えてお互いの気持ちがすれ違い、ヘインや一族の人々に見下されることにうんざりしたヒョヌは離婚を言い出そうとする。だが、その時、ヘインからまさかの一大事を告白されて離婚を引っ込める。そうこうするうちに財閥家を乗っ取ろうとする者の企みが密かに進行していく。財閥一族に格差カップル、骨肉の争い、復讐、不治の病や記憶喪失など韓国ドラマ特有のネタのオンパレードなのだが、そこは手練れ脚本家の腕の見せ所!現在と過去とを行きつ戻りつ、3年とはいえ、夫婦として歩んだ時間を振り返り、その一方で、現在の2人に起きた一大事や財閥家をめぐる騒動、そしてのどかな田舎にあるヒョヌの両親たちとの関係などを錯綜させて波乱に満ちたストーリーを展開させていく。
「涙の女王」というタイトルだけに、泣きのシーンも盛りだくさん。 “泣きの天才”と言われるスヒョンは、大泣きに泣きじゃくるシーンもあれば、目に涙をためてうるっとした表情を見せるなど、多彩な泣きのバージョンで楽しませて心をわしづかむ。主演のスヒョンとキム・ジウォンのケミも抜群で、こじれまくった夫婦のロマンスがどう再燃していくのか、目が離せなくなる。毎回、最後にあるエピローグも心憎いものばかり。さらにはそんな2人の恋路を阻み、財閥家の乗っ取りを目論む敵役をパク・ソンフンが演じている。「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」(22)での悪役の印象が強烈な彼が、今回も遺憾なくワルを演じ、あんなこと、こんなことを仕掛けてくるだけにハラハラせずにはいられない。また演出家が「ヴィンチェンツォ」を手掛けた縁で、同作で財閥のダメ息子を演じていたクァク・ドンヨンがヘインの愚弟役に、さらにはソン・ジュンギがヴィンチェンツォ役でゲスト出演しているなど遊び心も話題になっている。
ゴールデンウィーク中に全16話の配信が終わったいまから観るもよし。なにはともあれ、「愛の不時着」に並ぶ名作「涙の女王」で、ぜひともキム・スヒョンの演技力を心ゆくまで堪能してほしい。
文/前田かおり