トム・ヨーク、トレント・レズナー&アッティカ・ロスらが参加!『チャレンジャーズ』にいたるルカ・グァダニーノ作品の音楽へのこだわり

コラム

トム・ヨーク、トレント・レズナー&アッティカ・ロスらが参加!『チャレンジャーズ』にいたるルカ・グァダニーノ作品の音楽へのこだわり

イタリアの映画監督の作品を観てよく思うのは、とにかく音楽にこだわっているということ。名匠フェデリコ・フェリーニはニーノ・ロータ、マカロニウエスタンを代表する鬼才セルジオ・レオーネはエンニオ・モリコーネと、映画音楽界の巨匠とタッグを組んできた。さらに裾野を広げると、リズ・オルトラーニによる美しくも流麗なスコアは、『世界残酷物語』(62)や『アマゾネス』(73)、『食人族』(81)などのジャンル映画に意外性を与えていたし、ホラーの才人ダリオ・アルジェント作品には不気味なシンセサイザーミュージックが欠かせない。

アルジェントの『サスペリア』(77)を2018年にリメイクしたルカ・グァダニーノも、音楽にこだわるイタリア出身のフィルムメーカー。いまや世界的な映画監督として名を馳せる彼の新作『チャレンジャーズ』が公開されたこの機会に、グァダーニ作品の音楽の妙を振り返ってみたい。

男女3人のプロテニスプレーヤーたちの愛憎を描く『チャレンジャーズ』
男女3人のプロテニスプレーヤーたちの愛憎を描く『チャレンジャーズ』[c]2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved. [c]2024 METRO-GOLDWYN-MAYER PICTURES INC. All Rights Reserved.

スフィアン・スティーヴンスの叙情的なメロディがせつない『君の名前で僕を呼んで』の「ミステリー・オブ・ラヴ」

まずは出世作『君の名前で僕を呼んで』(17)。音楽を手掛けたスフィアン・スティーヴンスは米国のシンガーソングライターで、カリスマ的な支持を受けているアーティスト。本作ではアコースティックギターで奏でられる「ミステリー・オブ・ラヴ」で、第90回アカデミー賞歌曲賞にノミネートされた。静かだが叙情的な楽曲は、同性愛ストーリーのせつなさを強く印象づける。ちなみに本作では、グァダニーノ監督の『ミラノ、愛に生きる』(09)で音楽を担当したミニマルミュージックの提唱者ジョン・アダムスの楽曲も使用されている。

宗教音楽風のコーラスを交えた異様な響きが印象深いトム・ヨークの『サスペリア』

続いて取り上げたいのが、『サスペリア』だ。スコア担当はレディオヘッドのフロントマンとしてもおなじみのトム・ヨーク。こちらも反復を多用したミニマルミュージックの要素が多分に含まれている。シンセサイザーを多用しつつ、宗教音楽風のコーラスを交えた異様な響きが印象深い。ヨークは本作で歌も聴かせているが、まるで楽器のように鳴らされるそれは、映画の緊張感を盛り立てるうえで絶大な効果を発揮していた。

坂本龍一の不穏なサウンドが『ベケット』のサスペンスフルな物語を彩る

続くNetflix作品『ベケット』(21)でプロデューサーを務めたグァダニーノは、日本が世界に誇るコンポーザー、坂本龍一に白羽の矢を立てる。坂本とイタリア映画音楽の関連では、第60回アカデミー賞作曲賞を受賞した『ラストエンペラー』(87)をはじめとする、ベルナルド・ベルトルッチ作品が想い浮かぶだろう。『君の名前で僕を呼んで』でも、彼は2曲を提供しており、イタリア映画界からもリスペクトされていたことが十分にうかがえる。ここでの音楽はサスペンスフルな物語にふさわしく、不穏なサウンドが鳴らされている。


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