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【ネタバレレビュー】東京をエグりまくる“●”、ナン丸に訪れる最大の試練!クライマックスへ一直線の「七夕の国」6&7話

コラム

【ネタバレレビュー】東京をエグりまくる“●”、ナン丸に訪れる最大の試練!クライマックスへ一直線の「七夕の国」6&7話

“●”が東京を恐慌の渦へ陥れる!ナン丸も自身と向き合う重要局面に

エスカレートしていく頼之…その目的はある者への復讐だと言う
エスカレートしていく頼之…その目的はある者への復讐だと言う[c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

ドラマが大きく動きだす第7話は、頼之が巨大な“●”を操り東京都庁舎の上部を消し去る衝撃的なシーンで幕を開ける。激しい閃光やパンッという乾いた破裂音と共に、曲線を描いて切り取られた奇妙な姿をさらす都庁舎。それを見た人々が新宿の街を逃げまどうパニック描写は、丸神の里と大学で繰り広げてきた物語をいっきにスケールアップさせていく。これまでフィクサーに命じられるまま暗殺を繰り返してきた頼之だったが、「悪夢を終わらせる」とつぶやきながら自らの意思で旅客機や豪華客船を標的にした “無差別テロ”を慣行。日本を震撼させる存在となっていく。彼の矛先はこれからどこに向かうのか、戦慄を禁じ得ない。

ナン丸は頼之の凶行を止められるのか?
ナン丸は頼之の凶行を止められるのか?[c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

ナン丸自身も重要な局面を迎えていく。前回で飲み会から帰宅したナン丸は、夢の中で暗闇の中を落ち幸子と遭遇する夢を見た。単に酔って悪夢を見ただけなのか、それとも彼も “窓を開く能力”の持ち主なのかは曖昧だったが、その後も同じ夢を繰り返し体験。頼之と同じくナン丸も、“手がとどく者”であり“窓を開く者”でもあると判明した。超能力を封印し、自分の手を使う仕事を始めた直後に覚醒した能力にどう対応していくのか、二転三転していく展開に引き込まれる。

頼之の都庁攻撃を受けて東京都内に緊急事態宣言が発令され、ナン丸のバイト先も政府から休業勧告が通達される。パンデミックによる活動自粛がまだ記憶に新しい現在、無人と化した商店街で1人自転車をこぐナン丸や、自宅待機を命じられ「どうやって食ってきゃいいんだよ」と途方に暮れるバイト先の先輩の姿は胸に刺さるものがある。

ナン丸に、幸子への謝罪の言葉を伝えてほしいという高志
ナン丸に、幸子への謝罪の言葉を伝えてほしいという高志[c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

一方、頼之の真意を測れないまま行動を共にしている高志。今回は彼の内面にもスポットが当てられた。突然ナン丸の部屋を訪れ幸子への詫びの言葉を託した高志は、ナン丸から自分を気遣う妹の真意を聞かされ遠くを見つめるような表情をして去っていく。序盤こそ高圧的な態度やチンピラの足を切断するなど危険な空気をまとっていた高志だが、新技能啓発セミナーをめぐるナン丸との対立以降は、複雑な内面をうかがわせる描写が増えていた。幸子への想いを表情だけで語った今回は、『ディア・ファミリー』(公開中)や「ミス・ターゲット」「幽☆遊☆白書」など硬軟取り混ぜ多彩な役を自在に操る上杉のうまさが際立つエピソードでもあった。

危うく人を殺しそうになり、能力の恐ろしさを痛感するナン丸
危うく人を殺しそうになり、能力の恐ろしさを痛感するナン丸[c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

そんな高志からの情報提供もあり、誘拐された亜紀、佐藤の監禁場所へ救出に向かうこととなったナン丸。ドラマオリジナルのエピソードとなるが、2人を守るため、ここで彼は初めて人間に対して“●”の能力を使う。亜紀の必死の制止に我に返るが、ともすれば頼之のように、人を殺してしまいそうになるのだ。これは、緊張感走る局面においても常に楽観的だった、原作におけるナン丸像との決定的な違いといえるだろう。これまで“●”の平和的利用を模索していた彼が、能力の恐ろしさ、それを持つ自身の危険性を身をもって実感する。この描写は、今後の物語の展開においても重要な意味を持ってくるはずだ。


【写真を見る】逃げられるはずがない…絶望感を禁じ得ない超巨大な“●”が東京を覆う!
【写真を見る】逃げられるはずがない…絶望感を禁じ得ない超巨大な“●”が東京を覆う![c] 2024 岩明均/小学館/東映 岩明均「七夕の国」(小学館刊)

そして、一連のテロ行為を増元に諫められると、その目的について、どこまで“●”をコントロールできるかの実験でもあったと明かした頼之。フィクサーに決別を宣言したあと、直径3kmという超巨大な“●”を使ってフィクサーの住む住宅街をエグる凶行に出る。広大な街の真ん中にぽっかりと丸い穴が開いた様を上空からとらえた映像は、大友克洋の「AKIRA」のグラウンド・ゼロを想起させる壮大さ。無数の犠牲者を出した頼之が、政府により日本の敵と認定されることを匂わせながら第7話は幕を閉じていく。そんななか、再び隠された謎を解き明かすため、丸神の里に旅立つナン丸たち。頼之と増元の対立軸も明確化するなど、クライマックスに向けスケール、ストーリーともに盛り上がりを予感させる「七夕の国」から目が離せない!

文/神武団四郎

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