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怖さのなかに笑い&涙ありの最新作『サユリ』が公開!一筋縄ではいかない作品を連発する白石晃士監督の鬼才ぶりを振り返る

コラム

怖さのなかに笑い&涙ありの最新作『サユリ』が公開!一筋縄ではいかない作品を連発する白石晃士監督の鬼才ぶりを振り返る

ケレン味たっぷりのスペクタクルが炸裂した“やりすぎ”な「コワすぎ!」シリーズ

大学在学時から自主制作でフェイクドキュメンタリー(『暴力人間』)を作り、キャリア初期には「ほんとにあった! 呪いのビデオ」シリーズの演出を担当していたこともあり、フェイクドキュメンタリーは白石監督の十八番。モキュメンタリーの手法を本格的に取り入れた『オカルト』(09)をはじめ、ももいろクローバー(現:ももいろクローバーZ)を本人役で起用した『シロメ』(10)や、全編をノーカットの長回しに見せる手法を取り入れた『ある優しき殺人者の記録』(14)など、趣向を凝らした作品を次々と生みだしてきた。

白石晃士監督がカメラマンの田代を演じている(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』)
白石晃士監督がカメラマンの田代を演じている(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』)[c]2015ニューセレクト

なかでも「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」シリーズは、2012年にオリジナルビデオとしてスタートすると、シリーズ化し、劇場版が作られるまでに至った人気作。“投稿者から寄せられた怪奇映像を、ディレクターの工藤(大迫茂生)とアシスタントの市川(久保山智夏)、そして白石監督扮するカメラマンの田代の「コワすぎ!」撮影隊が調査するモキュメンタリーだ。

暴力的なディレクターの工藤とひどい目に遭いがちなアシスタントの市川といったキャラクターの個性も魅力(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』)
暴力的なディレクターの工藤とひどい目に遭いがちなアシスタントの市川といったキャラクターの個性も魅力(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』)[c]2015ニューセレクト

ありがちな心霊ビデオかと思いきやそこは白石監督、やはり一筋縄ではいかないシリーズとなっている。その最大の魅力は、モキュメンタリーでありながら、もはや嘘を信じ込ませようなどとは微塵も思っていないであろうケレン味のある描写の数々だ。

1作目の「口裂け女捕獲作戦」では正統派心霊ビデオ的な恐怖を描きつつも、口裂け女がものすごい勢いで迫ってきたり、撮影隊が口裂け女にまさかの物理攻撃(バット)で立ち向かっていたりと、ただならぬシリーズであることを予感させていく。

化け物を出し惜しみしないところも好印象だ(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-03 人喰い河童伝説』)
化け物を出し惜しみしないところも好印象だ(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-03 人喰い河童伝説』)[c]2012ニューセレクト

陰陽道の力を借りた工藤が五芒星の中心に立って河童を迎え撃とうとするトンデモな描写でファンの心を掴んだ3作目「人喰い河童伝説」、疑似ワンカット風の撮影でタイムループを表現し、さらに異界の存在まで登場した4作目「真相!トイレの花子さん」など、作品を重ねるごとにスペクタクル度はアップ。

異界からの存在に立ち向かうことになる『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』
異界からの存在に立ち向かうことになる『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』[c]2015ニューセレクト

怪奇現象の謎と共に工藤の生い立ちの秘密が明かされるなど、シリーズを通じて張り巡らされてきた伏線が徐々に回収され、異界の神の干渉により世界の危機が訪れるという壮大なスケールの話になっていく展開は驚愕。「最終章」では、『オカルト』の主人公である江野祥平(宇野祥平)が活躍するという、白石作品マルチバース的展開まで盛り込まれており、とにかくやりたい放題だった。

江野など他作品からのキャラも登場し、白石ユニバースが構築されている(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』)
江野など他作品からのキャラも登場し、白石ユニバースが構築されている(『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 最終章』)[c]2015ニューセレクト

大スケールの話に加え、カッとなるとすぐに手が出てしまう傍若無人ぶりが幽霊より恐ろしい工藤の暴力などギャグも満載で、ホラーという枠組みのなかでおもしろいと思うことをとにかくやりまくる、白石監督の気概が込められたシリーズだったと言えるだろう。


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