『IT/イット』『ミーガン』『変な家』『サユリ』…“ホラー×異ジャンル”こそが、エンタメの法則!
青春、バトル、どんでん返し…まさかの全部乗せ『サユリ』
ここまで紹介した“青春”、“バトル”、“どんでん返し”の要素が一本の映画のなかに詰め込まれた、全部乗せ状態のホラーがいま話題となっている。「ミスミソウ」や「ハイスコアガール」などで知られる押切蓮介の同名漫画を白石晃士監督のメガホンで実写映画化した『サユリ』(公開中)がそれだ。
神木家の7人家族は、郊外にある中古の一軒家に引っ越してくる。新生活にワクワクしていた中学3年生の長男・則雄(南出凌嘉)は、学校で隣のクラスの住田(近藤華)から突然「気を付けて」と言われ困惑する。すると、神木家に次々と理不尽なできごとが起こり、連鎖するように家族が怪死を遂げていく。
追い詰められパニック状態に陥った則雄の前に現れたのは、この家に棲みつく少女の霊“サユリ”。この霊がすべての恐怖の根源だったのだ。そんな時に則雄を救ったのは認知症だったはずの春枝ばあちゃん(根岸季衣)。意気消沈していた則雄に発破をかけるように、春枝は得意の太極拳を伝授。家族を奪った“サユリ”を地獄送りにするべく、則雄と春枝の壮絶な復讐が幕をあける…!
一度も話したことがなかった則雄と住田が、ぎこちないやり取りを交わしながら距離を縮めていく青春模様は、映画全体を通してホラー描写と絶妙なバランスを保つ。2人の関係の変化が終盤の展開を大きく左右させていく点も、ジュブナイルホラーらしい愛くるしさだ。
そして則雄と春枝の、孫と祖母という関係を超えた師弟関係は、旧くは『ベスト・キッド』(84)、近年なら『クリード チャンプを継ぐ男』(15)を彷彿とさせるような痛快さで、熱いバトルが否応なくエンタメ感を盛り上げていく。
また、“どんでん返し”の巧みさも見逃せないポイント。容赦ないホラー描写で畳み掛ける前半に圧倒されていると、後半ではガラリと様相が一変する。この衝撃的なテイストの変わりようは目の肥えたホラー映画ファンも、ふだんはあまりホラー映画を観ないという人も、度肝を抜かれること間違いないので劇場で体感してほしい。
“ホラー×異ジャンル”で、夏の夜を涼しく楽しむ!
ここで挙げた4作は、いずれもエンタメ性が高いうえに怖さもしっかりとあり、“怖いもの見たさ”に応えてくれること間違いなしだ。この記事を参考にホラー映画をチョイスして、夏の夜を涼しく過ごしてみては?
文/久保田 和馬