デビュー直後から快進撃を続ける奥平大兼が『Cloud クラウド』で見せつける新境地
『MOTHER マザー』(20)で衝撃的デビューを果たし、いまや日本映画人気を牽引する存在に成長した奥平大兼。8月に公開された映画『赤羽骨子のボディガード』ではボディガードが顔をそろえるクラスの司令塔、染島澄彦役でアクションに挑戦。続くサスペンススリラー『Cloud クラウド』(公開中)では、菅⽥将暉演じる主人公を脅かす手下役で存在感を示している。デビューから4年、まだ21歳ながら、数々の作品で爪痕を残してきた彼の軌跡を振り返る。
新人賞をかっさらった『MOTHER マザー』での鮮烈デビュー
初出演した映画『MOTHER マザー』で瞬く間に注目を集めた奥平。本作で主演の長澤まさみはシングルマザー役で新境地を開拓。奥平は彼女にネグレクト、虐待されながらも母を慕わずにはいられない息子を熱演した。初めてのオーディションで大役を得た奥平は演技未経験で、大森立嗣監督にみっちりとワークショップで鍛えられて現場に臨んだそう。その純粋な反応に長澤も本気で対応し、母親が息子をビンタする場面は渾身の一発。奥平の本物のリアクションは見逃せない。
新人とは思えない出演場面の多さだが、「緊張しない」という本人は初めての撮影を大いに楽しんでいた模様。大女優を前にしても物怖じしない堂々とした態度、並んでも遜色ないスクリーンから放たれるオーラ。突如現れた新星、シンデレラボーイはその年の日本アカデミー賞をはじめとした数々の新人俳優賞を総なめにする。
クルド人の少女の心に寄り添う男子高校生に『マイスモールランド』
映画ファンにとっては知る人ぞ知る存在だった奥平が、お茶の間で話題になり始めたのが初出演ドラマの「恋する母たち」。3人の主婦の恋愛模様を描いた作品で、奥平はゲイの高校生を演じた。同じく「恋母」で息子役だった宮世琉弥、藤原大祐と共にブレイク。その後のドラマ「ネメシス」ではナルシストな天才ハッカー役に扮し、劇場版『映画 ネメシス 黄金螺旋の謎』(23)でも続投した。
エンタテインメントな「ネメシス」とは対照的に、映画『マイスモールランド』(22)は社会派ドラマ。在留資格を失った在日クルド人の少女が主人公で、奥平は彼女のバイト仲間の聡太役。ガールフレンドの置かれた状況を理解できないまま、なんとか手を差し伸べようとする、日本人の男の子を等身大で演じている。絵が大好きな奥平がヒロインの嵐莉菜とアート制作する場面の眩しさはひと際。
天真爛漫で純粋な陽キャ男子に扮した『ヴィレッジ』
公私共に交流がある藤井道人監督と横浜流星が6度目のタッグを組んだ『ヴィレッジ』(23)は、「新聞記者」で関心を集めた藤井監督によるオリジナル脚本が話題に。横浜は閉鎖的な村のゴミ処理場で働くしか道がなく、しかたなく不法投棄を強いられている青年、片山優役。奥平は借金返済のため、東京からやって来た同じゴミ処理場で働く若者、筧龍太役を演じた。
村出身で周囲からいじめを受けている優の事情をよく知らず、彼を慕う部外者の龍太。強面メンバーのなかでも目を引く、奥平の金髪+全身タトゥー姿はインパクト大。無口な横浜と陽キャな奥平のやりとりが重苦しいムードのアクセントとなり、後々じわじわ効いてくる。所属事務所の先輩、横浜と奥平はこれが初共演となった。