【ネタバレあり】あなたはいくつ気づいた?『エイリアン:ロムルス』にちりばめられたイースターエッグの数々
劇伴にも耳を傾けてみよう
なんにせよアンドロイドがアッシュと同型なのでユタニ社の回し者であることは言うまでもない。本作ではリプリーが、脱出艇のナルキッソス号から宇宙空間へ放出したゼノモーフことビッグチャップが繭状になって宇宙を漂っているのをユタニ社が回収。それをもとにマザーエイリアン&エッグナシでフェイスハガーを量産できる研究をしていたのが今回の宇宙ステーションという設定になっていて、その研究のチーフ的な存在がルークだったようだ。本作でもルークは皮肉っぽさを発揮して『エイリアン』と同じ言葉「君たちは生き残れない。同情するよ」を若者たちにかけて失望させるし、『エイリアン2』のビショップと同じように「合成人間と呼ばれるほうがいい」とも言う。このシーンのバックに流れるのはジェリー・ゴールドスミスによる1作目『エイリアン』のテーマ曲だ。
音楽でもうひとつチェックしたいのは、再稼働を始めたルネッサンス・ステーションを若者たちが見回るシーンのバックに流れているワーグナーのオペラ「ラインの黄金」の終曲「ヴァルハラ城への神々の入城」。これは『エイリアン:コヴェナント』の冒頭近く、アンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)を初起動させたピーター・ウェイランド(ガイ・ピアース)が彼にピアノ演奏を頼んだ曲と同じ。神々の没落を予言した内容なので、これからの出来事を暗示した上手なチョイスだ。スコットはワーグナーが大好きなことでも知られている。
“悪名高き”ウェイランド・ユタニ社の変遷
もう一度、アンドロイドに話を戻すと、みんなにポンコツ扱いされるアンディがルークのモジュールを入れることで知能も体力も俄然アップ。みんなの指揮を執るようになる。大変身したアンディとルークが、感情に任せて右往左往する若者たちを醒めた目で見つめるのは『プロメテウス』からの流れ。なにせスコット、『エイリアン:コヴェナント』ではアンドロイドのデヴィッドに「価値のない種(人類)に再生はさせない」などと言わせているくらいなので、このアンドロイドの描写はツボだったはずだ。
そして、シリーズファンならやっぱりチェックしないといけないのはウェイランド・ユタニ社。主人公たちはみんな同社の植民地惑星で酷使されて未来に希望を見いだせないという設定だ。このシリーズのエイリアンに並ぶもうひとつの敵と言ってもいい。この巨大コングロマリット、1作目ではリプリーたちには「会社」と言われているだけで、名前は出ていなかったという説もあるが、クルーが飲んでいるアスペンビールのラベルをよーく見ると“Weyland Yutani”の文字と、以降のシリーズとは違うロゴが印刷されている。さらにはコンピュータのモニターにも名前が!お馴染みの“W”を模したロゴと、社名が“WEYLAND YUTANI”と大文字になるのは『エイリアン2』からだが、その中間に位置する本作ではすでに大文字になっている。
ところでこの大企業。時系列でいうところの『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』では“ウェイランド・インダストリー”という名前で『エイリアン』から“ウェイランド・ユタニ”と社名が変更されている。これについてスコットは『プロメテウス』のインタビューでこう答えていた。「ピーター(・ウェイランド)が亡くなって役員たちが企業の実権を握り、日本の湯谷社と合併したということなんだ。世界を動かすのは日本だから(笑)。でも、いまはインドにも注目しなくてはいけないだろうな」。これは12年の公開時の言葉なので、いまだともう日本ではないかもしれないが、時代の流れを考慮してそういう裏設定も考えられていたということなのだろう。『ブレードランナー』で近未来=日本的という図式を作った監督らしいアイデアだ。