次々と明らかになっていく浦野の本性
だが、浦野の本当の狂気が爆発するのはそこから。殺害した風俗嬢の黒髪の匂いを嗅ぎ、ことわりもなく彼女の髪を切る彼の奇行が明かされるころには、浦野の本性が次々と露わに。富田も知らない麻美の秘密を知ったことを本人に告げる時には爪をガチガチと噛みながら、飛び出しそうなほど大きく見開いた瞳で彼女の反応を食い入るようにチェック。麻美を監禁してからもその異常な行動はエスカレートし、吊るされ、鎖で足も拘束された彼女の黒髪を手にしながら「思った通り、いい匂いだ」と楽しそうにおどけて見せると、次の瞬間には白い木馬に跨って自身の犯行の種明かしを行う。さらに、「『愛してる』なんて無邪気なことを言える連中を見ると、ぶっ殺したくなるんだよ!そいつの化けの皮を剥がして、絶望させたくなる!」と毒づき、麻美だけでなく観客をも凍りつかせた。
そんな浦野のまた別の顔を炙りだしたのが第2作だ。加賀谷のなかに自分と同じ母親に対する屈折した愛憎があることを察知した浦野は、新たな連続殺人事件の捜査に難航する彼に寄り添い、かき乱す。刑務所暮らしで白髪になった外見にも以前のような気色悪さはなく、冷静沈着に真犯人「M」の犯罪心理を的確に分析する天才的ブラックハッカーらしい言動を印象づけると、捜査協力を依頼する加賀谷の心を弄ぶように、「最高のネット環境を用意してほしい」という異例の交換条件を成立させるしたたかさを見せつけた。
そのうえで、加賀谷がなにを考えているのか瞬時に読み取り、「(母親を)いつか自分の手で殺すことだけを夢見てきたんですから。そんな僕が人を愛せるわけがないですよね!」と本音をぶちまけながら、「じっと待っているだけじゃ獲物は捕まりませんよ」と煽り、同時に自身の脱獄計画も周到に用意。それでいて、「M」を仕掛けたトラップで引きずり出し、約束をきっちりと守るところには浦野の犯罪者としての美学が。警察が混乱するなか、正面から堂々と姿を消す脱獄劇も鮮やかだった。
最新作では浦野が仕掛ける壮大なハッキングゲームが展開!
最新作では、その浦野が5年の時を超えて再び動きだすが、その目的とは?彼にソウルで急接近する謎の黒髪の美女スミン(クォン・ウンビ)の正体と思惑は?そこから浦野自身も知らなかった彼の内に眠っていた新たなる感情が湧き上がり、浦野と彼に執着する加賀谷の対決が思いがけない形でクライマックスを迎える。はたして、浦野とは何者だったのか?文字通りの最終章で、そのすべてが明らかになる!
文/イソガイマサト