「すごく相性のいい6人だったと思います」
――本作のように、同世代の俳優が結集してお芝居をする撮影も珍しいと思いますが、共演されて刺激を受けた点があれば教えてください。
「芝居について話し合うことはそんなに多くはなかったんですけど、みんな、役者としてのプライドがあるし、自分のプランをしっかり考えて現場に臨んでいるのが伝わってきたので、それが刺激的でした。6人それぞれに見せ場があるんですけど、その時は全員空気が変わったし、それぞれの覇気を感じたから、みんなでお互いのスイッチを入れ合っていたような気がします」
――撮影の合間はどんな距離感で過ごされていたんですか?
「6人が初めて自己紹介し合う、ファミレスのシーンがクランクインだったんですけど、その時はお互いに探り合っているような感じでした。でも、(波多野を演じた)赤楚(衛二)くんの存在が大きかったのかなと思います。わずか1か月半ぐらいの撮影期間だったのに、最終ディスカッションの撮影の時にはみんなめちゃくちゃ仲が良くなっていて。6人でご飯も食べに行ったし、夏だったので、撮影の終盤には花火大会も一緒に見たんですけど、気を遣うこともなく、自然にツッコミを入れたり、ボケたりできる。久しぶりに会ってもすぐに打ち解けられる、すごく相性のいい6人だったと思います」
――いま、「赤楚さんの存在が大きかった」と言われましたが、赤楚さんがどんな影響を?
「赤楚くんがムードメーカーだったんです。最年長だし、先輩なんですけど、赤楚くんが最初にみんなに『タメ口にしようよ』と言ってくれて。だから僕も、先輩にタメ口なんてほとんど使ったことがないんですけど、赤楚くんのことは『衛二』って名前で呼ばせてもらいましたし、いまでも頻繁に連絡を取らせてもらっています。赤楚くんが先輩風をふかせたり、堅い人だったら、こんなにみんな仲良くなっていなかったでしょうね」
――その流れで、6名の中から、どなたかのあまり知られていない魅力や意外な素顔を告発してください。
「会う前と一番印象が変わったのは、(嶌を演じた)浜辺(美波)さんかもしれないな。すごく喋るし、けっこうムードメーカーかもしれない。赤楚くんもそうだけど、6人の中心にいて、場の空気を作ってくれましたからね。しかも、彼女は自分の話をするわけじゃないんです。自分が、自分がっていうタイプじゃなくて、誰かに質問を振ったり、僕のことをいじったりとかして、その人のことを目立たせる。そこが浜辺さんのスゴいところです。それでいて、めちゃくちゃ負けず嫌いで、芝居に関しても一見“別になにも考えていない”という雰囲気をまとっているのに、実は“絶対にやってやる!”と思っているタイプなんじゃないかな。芯があるし、そこが意外でした。年下ですけど、尊敬しています」
――自分の見せ場の撮影の時は皆さん緊張して、前日よく眠れなかった人もいたみたいですけど、佐野さんはどうでした?
「確かに、“今日はこの人を中心に撮っていく”というやり方だったので、僕も自分の番の時はちょっと緊張しました。僕の場合は、『●●は僕だ』って告白するところですね。あそこは大芝居をしなければいけないし、セリフも長いので、すごく緊張したし、クランクインの時からあのシーンのことをずっと考えていました」
――8年後のシーンは、九賀の最大の見せ場ですものね。
「でも、あの一連のシーンは本当に大変で。モノローグも全部覚えなければいけなかったし、最初に言ったように、九賀の行動がすごく特殊な動機によるものだったので、説得力を持たせるのが難しかった。言ってしまえば、九賀にとっては自分の行動で傷つくのは誰でもよかったんですよ。社会や世の中に対する怒りをどこかにぶつけたかっただけだと思うので、九賀はこの5人が相手じゃなくても、たぶん実行していたに違いない。大人に見えて、すごく幼稚だなと僕は思いましたけど、同じように行き場のない感情を抱いてもがいている若者も多いような気がするので、そういう人たちは、九賀の気持ちが少しわかるかもしれませんね」
――波多野が撮影した元カノの映像を九賀が観るシーンでは、佐野さんのアドリブが炸裂したそうですね。
「元カノの言葉を聞いて泣くところですね。でも、試写で観た時も泣いたことは思い出しましたが、芝居に夢中だったので、あれがアドリブだということは全然忘れていました」