「ムファサとスカーが悲しい関係になるのは、とても強い絆があったからだとわかってもらえるはず」(右近)
――「ライオン・キング」で思い出深いナンバーについても教えてください。
松田「高校の時、アメリカの学校の生徒とコラボする機会があって、言語も違う知らない人たちといきなり会って、『ライオン・キング』の楽曲で一つの舞台を一緒に作り上げたことがあります。言葉の壁もありましたが、やりましたね」
右近「いい経験ですね!僕は『ライオン・キング』の曲は普段からよく聴いていましたが、特にエルトン・ジョンの『愛を感じて(Can you feel the love tonight) 』が好きです。楽屋の支度中に聴いています」
松田「僕も超好きな曲です!最新作『ライオン・キング:ムファサ』で特に好きな楽曲は、けんけん演じるムファサとサラビが歌う劇中歌『聞かせて』です。本当に声がよすぎて、即購入だなと思いました」
右近「超うれしい!」
――お二人は、若き日のムファサとタカの絆を物語るミュージカルナンバー「ブラザー/君みたいな兄弟」を劇中で一緒に歌われたそうですね。
松田「彼らは最高の兄弟だったということを歌いましたよね」
右近「やはり物事には反動があり、『ライオン・キング』をご覧になっている方は、ムファサとスカーがああいう悲しい関係になってしまったのは、とても強い絆があったからだとわかってもらえるのではないかと。その曲もいいので、ぜひ買ってください(笑)」
「堂本光一くんからの言葉は、いまでも心に響いています」(松田)
――本作が「ライオン・キング」の“はじまりの物語”ということで、お二人にとっての初舞台やデビューした当初のエピソードや、お世話になった先輩などについても聞かせてください。
右近「単発の舞踊ではなく、初めて歌舞伎の舞台に出たのは7歳の時で、(中村)勘三郎さんの舞台でした。子どもだからめちゃくちゃ褒めてくれるけど、勘三郎さんは決して僕を子ども扱いせず、芸人としてしっかり教えてくれるという本当に幸せな環境で、これが毎日続くなんて、ここは天国だと思いました。だから、1か月の公演を終える千穐楽の次の日は地獄で、あまりにもつらくてショック状態だったから、次の日、学校に行けなかったんです。号泣しながら勘三郎さんに電話したら『ダメだよ、学校行かなきゃ。僕も次の仕事をやるからさ』と言われました。
いまでも『楽しい時間は終わりが来る、そして次のまた始まりがやってくる』というサイクルでお仕事をしています。でも、終わることが寂しいと感じるのは、それだけ気持ちがそこに寄り添っていたからなので、毎回千秋楽の日に寂しいという気持ちを抱ける自分でいたいとも思っています」
松田「すごくすてきなお話ですね。僕はKinKi Kidsの堂本光一くんのお芝居『Endless SHOCK』でしたが、舞台経験もほとんどなかったので、そこでいろんな“はじめて”を経験させてもらいました。その時、光一くんと二人きりになったタイミングで『僕はどうしたらいいですかね?』と相談したら『無理してでも死ぬ気でやれ』と、ぽろって言われて。僕もなにが正解かは当時、わからなかったのですが、ちゃんと真摯に真っすぐやるということで、最近になって『これなのか!』と思える瞬間があり、いまでもすごく響いている言葉です」
――最後に、さらに進化した超実写版『ライオン・キング:ムファサ』の映像についての見どころも教えてください。
松田「やはり迫力は、より増し増しですごかったです。一頭ずつ、容姿もキャラクターも声も違いますし、すごくおもしろいなと感じました」
右近「まるで実物のライオンを見ているかのような“究極のリアル”だなと驚きました。ムファサで言えば、タカを思ってしゃべるシーンの目線などが人間的な表情表現と折り重なっていて、より共感が深まります」
松田「自然の風景もすごくて、ムファサが風を感じる瞬間に、僕は風が見えた気がしました。けんけんの声を聞いたうえで、そう感じました」
右近「あのシーンでしょ!確かに風が見えるかも。だから本作はぜひ大スクリーンで観てほしいです」
取材・文/山崎伸子