コメディやSFでも強烈なインパクト…「私の好きな言葉です」
SNSである種のネットミームと化したキャラクターといえば、やはり庵野秀明監督の『シン・ウルトラマン』(22)のメフィラス役だろう。高い知能を武器に地球の人類へと接触し、紳士的な態度で静かに地球征服を目論む。なにか格言めいた言葉を言ったあとに「私の好きな言葉です」や「私の嫌いな言葉です」と付ける“メフィラス構文”は大ブームを巻き起こし、近年の山本の代表作・代表キャラクターとなったといっても過言ではないだろう。
ほかにも今年「新語・流行語大賞」にも輝くなど話題を集めたテレビドラマ「不適切にもほどがある!」では、テレビ局のプロデューサー役としてシリアス顔でコメディ演技を披露するだけでなく、ミュージカル演技も披露。同じく宮藤官九郎が脚本を務めたNetflixシリーズ「離婚しようよ」では、松坂桃李演じる主人公と対立する野心的な政治家役で迫真の演技を見せる。どちらも「地面師たち」の青柳を想起させる、会心の当たり役であった。
また、若杉公徳の人気漫画を伊藤英明主演で実写化した『KAPPEI カッペイ』(22)では、“終末の戦士”として育てられ、突如として現代社会に解き放たれた戦士の一人、正義役を体当たりで熱演。45歳にして尾崎豊の歌に傾倒し、茨城のヤンキー中学生とつるむシュールなキャラクターで、鍛え上げられた肉体を無駄遣い。フィジカルを駆使したアクションとコメディの融合という点では、今回の『はたらく細胞』にも通じるものがある。
今回の『はたらく細胞』について「身体のなかのことを描いていますから、全世界、全人類に当てはまる。勉強して医学書を読んで…となると結構プレッシャーもありますけど、これは観るだけで『へー、そうなんだ』ということがわかるし、それぞれのキャラクターがすごく魅力的。自分の身体を改めて大切にしようと思える作品だと思います」とアピールする山本は、先日解禁された「『はたらくさいぼう』うた動画」で劇中衣装をまとって名曲「はたらくくるま」の替え歌を圧巻の歌唱力で歌い上げた。
コメディから悪役、さらには時代劇やミュージカルまで、俳優としての引き出しがとにかく多く、どんな作品でも観る者の記憶に焼きつく強烈なキャラクターを見事に演じ抜いてきた山本。本作でのキラーT細胞としての“クセ強キャラ”ぶりに注目しながら、人間の体の中で繰り広げられる“世界最小の物語”の世界を楽しんでほしい。
文/久保田 和馬