『カルキ 2898-AD』とインド神話「マハーバーラタ」のつながりとは!?これさえ知っていれば映画が120%楽しめる!
世界中で注目されているインド映画界から、なんとあの『RRR』(22)を超える110億円の製作費をかけた、インド史上最大規模のSFスペクタクルアクション『カルキ 2898-AD』が2025年1月3日(金)に、日本で公開される。
本作の主演は、「バーフバリ」シリーズや『SALAAR/サラール』(23)のプラバース、ボリウッドの美の女神ディーピカー・パードゥコーン、そして伝説の大俳優アミターブ・バッチャンである。インドを代表する新旧の大スターたちが共演する夢の映画というだけでもすごいのだが、本作のストーリーはインド神話や古代インド叙事詩「マハーバーラタ」が下敷きになっていることでも注目されている。
本稿では『カルキ 2898-AD』の魅力や見どころ、本作を観る前に読んでおいてほしい、背景となる「マハーバーラタ」のあらすじをイラストとともに紹介していきたい。
未来世界を舞台に繰り広げられる爽快なSFアクション『カルキ 2898-AD』
『カルキ 2898-AD』は、「マハーバーラタ」の大戦争から物語がはじまる。大戦争の後、神の呪いによって不死となった英雄アシュヴァッターマン(アミターブ・バッチャン)は、いつの日かこの世に生まれてくる救世主の母親を守る運命を背負うことになった。
6000年後。世界は荒廃し、地上最後の都市カーシーは、巨大要塞コンプレックスに支配されていた。運命の子を身籠った女性をめぐり、反乱軍とコンプレックスが衝突するなか、賞金稼ぎのバイラヴァ(プラバース)は、不死身の戦士アシュヴァッターマンと出会う。彼らの運命が交差するとき、新たな物語が幕を開ける。
本作は、「スターウォーズ」や「デューン」シリーズを彷彿とさせる未来世界を舞台に、バイラヴァたちが縦横無尽に活躍する爽快なSFアクション映画だ。インド神話や「マハーバーラタ」を知らなくても十分に楽しむことができるだろう。しかし、ほんの少しだけ背景となる文化を理解しておくと、おもしろさが何十倍にも跳ね上がる。
話の根幹になる「マハーバーラタ」とは?
「マハーバーラタ」を一行で説明すると「正義の五人の王子と悪の百人の王子が、王位継承権をめぐって争い、大戦争で多くの人が亡くなる」という悲しい話である。しかし、インドでは国民的な人気があり、「マハーバーラタ」のエピソードは、子どものころからテレビドラマや映画、小説、漫画や絵本など、様々なかたちで親しんでいる。日本で例えるとすれば、「桃太郎」や「平家物語」「忠臣蔵」の立場に近い作品と言えるかもしれない。
「マハーバーラタ」は紀元前3世紀から紀元後3世紀ごろに形になったと考えられている。全18巻という大長編で、王家の物語を中心としながら、ヒンドゥー教の聖典としての神話や宗教的な規範や思想、説話などが挿話として山ほど盛り込まれている。そのためインド文化に馴染みがない人には理解しづらい箇所もあるかもしれない。
でも、安心してほしい。ここに「マハーバーラタ」の中核となるエピソードを、3分で読める内容にまとめてみた。これさえ知っていれば『カルキ 2989-AD』を楽しむことができる。
3分でわかる「マハーバーラタ」のあらすじ
パーンドゥ王の五王子は、すばらしい資質をもっていた。しかし、パーンドゥ王は若くして亡くなり、盲目であった兄弟が王位を継いだ。盲目王には百人の王子がいたが、長男であるドゥルヨーダナは、邪悪で嫉妬深い性格の持ち主だった。一方、パーンドゥ王の長男・ユディシュティラは人望があり、「ドゥルヨーダナよりユディシュティラのほうがクル国の次期王にふさわしい」という声が上がっていた。不安に苛まれていたドゥルヨーダナは五王子を憎み、暗殺しようと計画する。命をねらわれた五王子は城を逃げ出し森で暮らした。その後、盲目王は五王子に領地を与え、百王子と争わないように取り計らった。五王子の都はとても栄えた。
しかし、美しい都を見たドゥルヨーダナは嫉妬し、五王子から富を奪おうと、「敗者は12年間森に住んだあと、1年間正体を知られることなく隠れて暮さねばならない」という条件を挙げ、叔父と一緒に謀ったイカサマ賭博にユディシュティラを誘う。百王子の謀略が成功し、すべてを失った五王子は、国を出て放浪生活をすることになった。13年後、約束の期限がきたので五王子は国に戻ったが、百王子は奪ったものを何も返さなかった。
五王子と百王子の諍いはすぐに周辺国を巻き込んだ大戦争に発展した。どちらの陣営にも、神の武器を使える戦士たちがいた。戦いは激しさを増し、大地は血で染まり、数多の兵が亡くなった。誰も戦争を止めることができず、戦況は混沌としていき、五王子たちは勝利を収めるために不正を行う。最終的に五王子が百王子陣営を倒したが、五王子と僅かな者しか生き残らなかった。
戦争のあと、国を平和に統治した五王子たちは、寿命を悟りヒマラヤにある天国へと向かい、この世を去った。