木村拓哉の手さばきに酔う!調理音、咀嚼音…”ASMR”を堪能できる『グランメゾン・パリ』は“IMAX推し”
パリの風景や、クラシカルな洋館、レストラン、舞台もスクリーン映え
タイトルが表す通り、本作の主な舞台となるのは、美しい街並みと、重厚感溢れる歴史的な建造物の数々に目を奪われる、フランス・パリ。ドラマ「グランメゾン東京」でも印象的だった、エッフェル塔を目前に臨める、セーヌ川に架かるビラケム橋や、エトワール凱旋門をはじめ、映画冒頭のガラディナーの会場として、フランスの老舗ハイジュエリーブランド「ブシュロン」本店が登場。パリコレモデルでもある冨永愛扮するリンダ・真知子・リシャールも、ゴージャスなドレスとジュエリーを纏い、「グランメゾン」の実力をみずからの舌で確かめにくる。尾花の師匠が経営する、螺旋階段が印象的な由緒ある三つ星レストランのシーンも、パリ16区にある、ロシア・スラヴ系のフランス料理を提供するレストラン「メゾン・レヴカ」で撮影された。本場で「三つ星」を追求しつづける尾花たちの「本物志向」を映像でも裏付けている。
リアルなパリを肌で感じられるのも、臨場感あふれる音と、目の前いっぱいのスクリーンで究極の没入感を促すIMAXならでは。1969年にパリ郊外に設立され、いまや世界最大級の総合卸売市場として知られる“パリの胃袋”こと、ランジス市場も、本作における重要なロケ地の一つ。およそ234ヘクタールもの広さを誇る広大な市場には、鮮度の高い肉や魚介、野菜、果物を扱う店が軒をつらね、なかにはパリの有名レストランに優先的に食材を卸す業者も。毎朝3時、4時から尾花がシェフの相沢やコミの小暮を伴い、粘り強く交渉しながら仕入れるシーンも見どころだ。
窮地に立たされたチーム・グランメゾンの真剣な表情、悔し涙…
ドラマ「グランメゾン東京」から見続けているファンならば、かつてはカリスマシェフの称号を欲しいままにしていたものの、慢心から一度はドン底まで堕ちた経験を持つ型破りなシェフ・尾花が、いかにして再起を図ったかは自明の事実だろう。さすがの尾花も一目置くほど絶対的な味覚を持つ倫子や、“グランメゾンの良心”こと、心優しきジェントルの相沢に、尾花や相沢の性格を知り尽くす京野。そして、いまなお「グランメゾン東京」で働くすべてのシェフやスタッフの支えなくしては、ここまでの偉業は成し遂げられなかったはずだ。
名だたる巨匠たちがしのぎを削る本場フランスで、フランス料理で “三つ星”を獲得することは、尾花にとっての悲願。だが、異国の地に店を構えるシェフにとっては満足のいく食材を手に入れることにすら高い壁があり、“三つ星”に選ばれるなど、夢のまた夢。「グランメゾン・パリ」は長らく結果を出せない日々が続いていた。あるガラディナーでの失態が原因で、かつての師と「次のミシュランで三つ星を獲れなければ、店を辞めフランスから出ていく」という約束を交わしてしまった尾花のことを、グランメゾン・パリのスタッフたちは支え切ることができるのか…。
パリが舞台ということもあり、尾花の店で働くシェフやスタッフも、実に国際色が豊か。尾花は、パリで自分の店を持っていた韓国系カナダ人の天才パティシエである、リック・ユアンを引き抜くが、料理に対する思いの強さゆえに、2人はたびたび衝突を繰り返す。一方、尾花を尊敬するシェフの卵の“グレ”こと小暮は、誰とでもすぐに打ち解ける人懐こい性格で、潤滑油の役割を果たしている。高画質&高音質のIMAXで観ることで、言葉にならない表情で魅せるキャスト陣の繊細な芝居と共に、日本人キャストが挑んだ流暢なフランス語にも注目したい。とある理由から、フランス人マフィアに追われることになったユアンや尾花が、反撃のために繰り出す橋下での激しいアクションシーンや、燃え盛る炎から間一髪で脱出するシーンも見逃せない。
IMAX向けの作品と言えば、派手なアクション作品ばかりだと思われがちだが、本作『グランメゾン・パリ』のように、歴史的な建造物に細かな装飾が施された美しいパリの街並みや、美麗で繊細な料理の数々を、音や質感で堪能する楽しさもある。ドラマ「グランメゾン東京」に引き続き、映画『わたしの幸せな結婚』『ラストマイル』ほか、TVドラマ「MIU404」「アンナチュラル」などの話題作を手掛ける塚原あゆ子監督と、映画『キングダム』『ゴールデンカムイ』の脚本も手掛けた黒岩勉によるタッグで贈る『グランメゾン・パリ』。挫折や国境の壁を乗り越え、仲間と共に世界最高峰の“三つ星”を目指す尾花の挑戦を描いた『グランメゾン・パリ』を、ぜひともIMAXで味わってほしい。
文/渡邊玲子