ミュージカル映画の金字塔『レ・ミゼラブル』がスクリーンに蘇る!“リミックス”で進化した生歌・サウンドの魅力とは

ミュージカル映画の金字塔『レ・ミゼラブル』がスクリーンに蘇る!“リミックス”で進化した生歌・サウンドの魅力とは

2012年に公開され、日本でも興行収入58.9億円という大ヒットを記録。アカデミー賞では作品賞など7部門にノミネートされ、アン・ハサウェイの助演女優賞など3部門を受賞。『レ・ミゼラブル』はミュージカル映画の金字塔として、多くの人に愛された。その“レミゼ”が12年の時を経て大スクリーンに帰ってくる。この『レ・ミゼラブル デジタルリマスター/リミックス』(公開中)は、どのような新たな興奮と感動の体験を導くのか。

「リマスター/リミックス」で映像も音もクリアになって蘇った“レミゼ”

投獄されていたジャン・バルジャンが、仮出獄で心を入れ替えて市長になるも、ジャベール警部に正体を見破られて追われる物語に、若者たちが革命で血を流す悲劇が重なる『レ・ミゼラブル』。その荘厳な世界がミュージカルで描かれたという意味で、今回の再公開でぜひ味わってほしいのが、Dolby Cinema、Dolby Atmosでの鑑賞だ。「リミックス」とあるように、12年前の公開時から、さらに豊かになった「音」が、作品の真髄を提供してくれる。

19年間投獄されていた主人公、ジャン・バルジャンを演じるヒュー・ジャックマン
19年間投獄されていた主人公、ジャン・バルジャンを演じるヒュー・ジャックマン[c]2012,2023 UNIVERSAL PICTURES

今回のリミックスの効果は、オープニングからいきなり発揮される。ユニバーサル・ピクチャーズのロゴが出たあと、スクリーンの奥のほうからドラムの音が静かに迫ってくる。徐々に大きくなるその音とともに、観ているこちらは身体の芯の部分が震えだす。そんな感覚が作品への期待も高める。そしていきなり大波の音が炸裂すると、ほかの投獄者とともに船のオールを漕ぐ、ヒュー・ジャックマン演じるジャン・バルジャンの悲壮な表情が映し出される。ゆっくり高まるオーケストラのドラム、そして波の轟音で、ジャン・バルジャンの苦しみをここまで臨場体験させるのは、Dolby音響のなせる業(わざ)ではないか。作品の“つかみ”で、いっきに世界に没入してしまう…。

そしてもうひとつ、リミックスによってクリアになったのは、ミュージカルシーンでの繊細な音の数々だ。この『レ・ミゼラブル』はミュージカル映画としての大きな特徴がある。歌以外のセリフがごくわずかという点だ。つまり登場人物の言葉が、ほとんど歌で伝えられる。通常のミュージカル映画は、ダンスや歌の“ミュージカルパート”と、日常と同じ会話で展開される“通常パート”にくっきり二分されるが、本作は、全編が歌で語られる『シェルブールの雨傘』(64)に近く、俳優の演技と歌のパフォーマンスがほぼ一体化している。


第17回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールも受賞した名作ミュージカル『シェルブールの雨傘』
第17回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールも受賞した名作ミュージカル『シェルブールの雨傘』[c]Everett Collection/AFLO

こうしたスタイルのため、『レ・ミゼラブル』は革新的な演出が試みられた。事前にレコーディングされた歌に合わせ、俳優がいわゆる口パクで演じる通常のミュージカル映画と違って、俳優が撮影時に歌った音源が使われたのだ。演じている時の感情をそのまま歌声として収めるという、当時としてはチャレンジングな手法。このスタイルは、ちょうど来年(2025年)3月に日本で公開される、話題のミュージカル映画『ウィキッド ふたりの魔女』でも取り入れられている。つまり“生歌”の荒々しさや切なさ、繊細さが、映画を観る側にアピールするわけで、それがリミックスでさらに強化された印象だ。

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