『リング』『呪怨』『犬鳴村』…ホラーの大ヒットが“冬”に続出する深いワケとは
Jホラーの“正統継承者”が放つ、話題作『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』
そして2025年も、お正月がひと段落した1月の後半から2月にかけて注目作が続々公開を控えている。
そのなかでも最大の注目作と言えるのが、「第2回日本ホラー映画大賞」で大賞に輝いた同名短編を、受賞監督である近藤亮太監督が自ら長編リメイクした『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』(1月24日公開)。幼少期に弟が失踪した過去を持つ主人公の兒玉敬太(杉田雷麟)のもとに、一本の古いビデオテープが送られてくる。そこに映っていたのは、弟がいなくなる瞬間。それをきっかけに敬太は、自分について回る忌まわしい過去をたどるべく“山”へと向かうことに。
SNSを中心に大きな反響を集めた「TXQ FICTION」の「イシナガキクエを探しています」や「飯沼一家に謝罪します」で演出を務めた近藤監督はこれが商業長編監督デビュー作。映画美学校時代には『リング』の高橋洋の指導を受け、高橋作品の助監督も経験。本作では『呪怨』の清水崇監督が総合プロデュースとして全面的にバックアップしたという経歴を持ち、“Jホラーの正統継承者”とも言われる期待の大型ルーキーだ。
ジャンプスケアに頼ることなく徹底的かつ純然と恐怖を追究した作風は、昨年秋に行われた第37回東京国際映画祭でワールドプレミア上映されるやホラーファンから熱烈な支持を獲得。「第1回日本ホラー映画大賞」から生まれた『みなに幸あれ』に続き、日本のホラー映画界に旋風を巻き起こすこと間違いなしだ!
心霊現象にオカルト、流行りの“村ホラー”も!
さまざまなジャンルの作品を手掛ける職人監督として知られる城定秀夫監督が、深川麻衣を主演に迎えた『嗤う蟲』(1月24日公開)も見逃せない一本。実際に起きた村八分事件をもとに、現代日本に隠された”村社会”の実態を暴く本作は、田舎でのスローライフを夢見て移住してきた若い夫婦が、禍々しくも抗うことのできない村の掟と村人たちの狂気に呑み込まれていく様が描かれていく。近年流行りの“村ホラー”とは一味も二味も異なるジャンルレスな恐怖が味わえる一本だ。
また海外からも、容赦のないストーリーやショッキングな映像表現で話題を集めるホラー映画が次々と上陸。アルゼンチン発のオカルトホラー『邪悪なるもの』(1月31日公開)は、古くから伝わる“7つのルール”を破った人々の愚行によって“悪魔憑き”が伝染病のように拡大していくなかで、家族を守るために奔走する兄弟の姿を描いた作品。シッチェス・カタロニア国際映画祭ではラテンアメリカ作品初の最優秀長編映画賞に輝き、多くの批評家からも絶賛を獲得している。
悪夢を再現した動画をYouTubeチャンネルに投稿し、一部でカルト的人気を誇る映像作家カイル・エドワード・ボール監督が長編デビューを飾った『SKINAMARINK/スキナマリンク』(2月21日公開)は、実験的な映像表現によって、現実と悪夢の境界をさまようようなおぞましい体験ができるイマジネーション・ホラー。真夜中に目を覚ました2人の子どもが、歪んだ時間と空間に混乱しながら、暗闇に潜む蠢く影と悪夢のような恐ろしい光景に呑み込まれていく。北米では「血も涙もない」という声と共に多くのホラーファンを魅了し、多くのメディアが“2023年のベストホラームービー”に挙げた。
ほかにも、映画監督を目指しストップモーション・アニメを制作する女性が闇と狂気の世界に入り込んでしまうサイコロジカルホラー『ストップモーション』(1月17日公開)や、名優ラッセル・クロウが“悪魔祓い”を題材にしたホラー映画の制作現場で恐怖を味わう落ち目の俳優を演じる『ザ・エクソシズム』(2月21日公開)などが待機。寒い冬こそ、映画館で身も凍るような恐怖を味わってみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬