80年代の九龍城砦を舞台にした、少年漫画のようにアツくて泣ける『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のおもしろさ

コラム

80年代の九龍城砦を舞台にした、少年漫画のようにアツくて泣ける『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』のおもしろさ

次世代スターたちが後半の物語を盛り上げる!

ロッグワン役のレイモンド・ウォンをはじめとする若き俳優たちの熱演も確実に観る者を魅了する。『スタントマン』(24)のテレンス・ラウがロンギュンフォンを兄貴と慕う九龍城砦の若頭ソンヤッを演じれば、常にリーゼントの髪がキマッてるかを気にしている義理堅いギャング、サップイーを『宵闇真珠』(17)のトニー・ウーが演じて個性を発揮。顔の傷を隠すためにマスクを装着している砦の医師セイジャイに扮したジャーマン・チョンの無骨だけどフレンドリーなキャラクターも印象的。次世代スターたちが演じた、それぞれがキャラ立ちまくりの4人組が後半の物語を牽引していく。

九龍城砦から追い立てられたロッグワンたち
九龍城砦から追い立てられたロッグワンたち[c]2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.

九龍城砦を守るため!熱量高いファイトがクライマックスで繰り広げられる

クライマックスは、ロッグワンら4人が、敵に乗っ取られた砦に殴り込むシークエンス。気功を駆使して銃や刃物、打撃のダメージをいなしてしまう強敵相手に、チームで連携して挑む肉弾アクションはスピード感満点。カンフーやワイヤーワークといった香港アクションの伝統的な要素に加えて、九龍城砦の立体構造が生かされたパルクールのような縦横無尽のファイトも繰り広げられる。俺たちの居場所を、住人のための九龍城砦を取り戻すため、そして命を散らした仲間のため。ロッグワンらの戦いは、そんな感情に裏打ちされ、とてつもない熱を帯びていく。そう、これはまさに、ジョン・ウーやジョニー・トーら香港アクションの鬼才たちの作品に通じる熱血映画なのだ。

香港映画のスピリットを受け継いだアドレナリン全開のアツいアクションに感涙必至の『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』
香港映画のスピリットを受け継いだアドレナリン全開のアツいアクションに感涙必至の『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』[c]2024 Media Asia Film Production Limited Entertaining Power Co. Limited One Cool Film Production Limited Lian Ray Pictures Co., Ltd All Rights Reserved.


ご存知のとおり香港は、中国返還や独立運動など、この後も激動の歴史をたどり、変わり続けている。『マッド・フェイト』(23)などで知られるソイ・チェン監督は、そのような数々の苦難も視野に入れながら、どんなに街が変わっても決して変わらないものを、アクションを通して描き切る。それがなにかを説明するのは無粋なので、ここでは控える。アドレナリンと感涙のなかに見えてくる香港映画の、そして香港のスピリットに、ぜひふれてほしい。

文/相馬学

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