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「インファナル・アフェア」で改めて考える!トニー・レオンが歩んだ軌跡とファンを惹きつける魅力

コラム

「インファナル・アフェア」で改めて考える!トニー・レオンが歩んだ軌跡とファンを惹きつける魅力

映画俳優としてのキャリアも40年を超え、今年の第80回ヴェネチア国際映画祭では栄誉金獅子賞を授与されたトニー・レオン。1983年にテレビから映画に軸足を移し、一気に花開いたレオンのフィルモグラフィは、その数もさることながら、アレもコレも夢中になった作品名が連なっていることに改めて驚かされる。

第80回ヴェネチア国際映画祭では栄誉金獅子賞を授与された
第80回ヴェネチア国際映画祭では栄誉金獅子賞を授与された写真:SPLASH/アフロ

ファンはそれぞれ、トニー・レオン“マイベスト”や“偏愛ベスト”を胸に抱いているだろうが、数あるなかで誰もが“コレだけは外せない”と愛して止まないのが、香港ノワールの金字塔『インファナル・アフェア』(02)だろう。あのセリフに、あのシーンに、あのシャツがはだけた胸元に、あの苦悩の表情に、あの甘いタレ目と眉間に、痺れながらせつなさが募り涙がちょちょ切れた…。

マフィアとして生きながら、警察官としての職務を全うしようとするヤンを見事に演じきった!(『インファナル・アフェアIII 終極無間』)
マフィアとして生きながら、警察官としての職務を全うしようとするヤンを見事に演じきった!(『インファナル・アフェアIII 終極無間』)[c]2003 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved.

そんな多くのファンが泣いて喜ぶ企画――11月3日(金・祝)より「インファナル・アフェア」3部作の4K版がリバイバル上映される。(開催中の)第36回東京国際映画祭でも来日し、にわかに日本中が“トニー祭り”の様相を呈するいま、改めて彼の魅力を振り返ってみよう。

男臭いノワールものに柔らかさを混ぜ合わせるトニー・レオンの存在感

香港ノワールに始まり現代劇&時代劇アクション、キュートなコメディからしっとり系の恋愛もの、さらにシリアスな人間ドラマまで、幅広いジャンルを縦横無尽に駆け抜けてきたレオンだが、どんなジャンルの作品でも観客に“束の間の夢”をとことん見せてくれる。その“ガチガチでない作品選び”の軽やかさや対応力も魅力だが、それに反し伝説的監督に“トニーじゃなきゃダメなんだ!”と乞われる唯一無二の男でもある。

なるほど彼が参加するだけで、どんな作品にもある種の“軽さ”が漂う。ガチな男臭いノワールものだろうが、なぜか女性も見やすくさせる柔らかさがマーブル模様のように混じり込むのだ。それは「インファナル」シリーズの世界的かつ時代を超えた人気の理由の一つでもあり、数年後に早くもハリウッドリメイクされた『ディパーテッド』(06)と比べると一目瞭然だ。


【写真を見る】安心したように無防備に眠るトニー・レオン演じるヤンがかわいい!(『インファナル・アフェアIII 終極無間』)
【写真を見る】安心したように無防備に眠るトニー・レオン演じるヤンがかわいい!(『インファナル・アフェアIII 終極無間』)[c]2003 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved.

さて、レオンの名が世界に知れ渡ったのは周知のように『悲情城市』(89)だが、台湾のホウ・シャオシェン(まさに伝説的監督!)はレオンが台湾語をしゃべれないと知るや、役を聴覚障害者に変えて(セリフなしで)出演させたという有名な逸話が。これにより演技派と目されるようになるが、その後は(たぶん)乞われるままアクション・エンタテインメントに多数出演。

そんななかでピーター・チャンのファンタジーコメディ『月夜の願い』(93)で新たな魅力を振りまき、日本にも多数のファンを生んだ。レオン扮する青年が両親の若かりし日にタイムスリップして繰り広げるハートウォーミングな物語で、劇中の女性も観客をも視線でキュンと悩殺する。ほだされずにはいられない困ったようなタレ目や濡れた仔犬のような瞳は、早くも無敵のトレードマークに。当時より交際していた現在の妻カリーナ・ラウがレオンの母親を演じているので、いろんな意味で見逃せない一作となった。

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