20年ぶりにスクリーンで激突! 香港映画界永遠のビッグ2、トニーとアンディの強固な絆

コラム

20年ぶりにスクリーンで激突! 香港映画界永遠のビッグ2、トニーとアンディの強固な絆

時間をかけたからこそ結実した「珠玉の再共演」

アンディとトニー(親しみを込めて、以後そう呼ばせてもらおう)は、香港のテレビ局・TVB(無綫電視)の俳優養成所で演技を学び、同じくTVBのドラマシリーズでブレイクした新世代のスターだった。1984年、金庸の武俠小説を原作とする「鹿鼎記」全40話にダブル主演し、一躍人気者となったふたりは、揃って映画に軸足を移していく。だが、その後のキャリアの重ね方は対極的だった。

歌手活動と並行して、猛烈な勢いで出演本数を増やしていったアンディ。「作品選びに節操がない」「芝居がワンパターン」などと揶揄されながらも、ウォン・カーウァイ監督の『いますぐ抱きしめたい』(88)、ベニー・チャン監督の『アンディ・ラウの逃避行』(90)など、のちに映画界を支える俊英たちと組んで忘れがたい作品も多く残した。また、この時期にありとあらゆる感情表現(型に忠実な芝居も含め)を演じたからこそ、『インファナル・アフェアIII 終極無間』(03)の一切夾雑物のない狂気、そして今回の『ゴールドフィンガー』における透徹した凄みのような演技スタイルを獲得しえたことは間違いない。

壮絶な闘いが衝撃の結末を迎える『インファナル・アフェアIII 終極無間』
壮絶な闘いが衝撃の結末を迎える『インファナル・アフェアIII 終極無間』 [c]Everett Collection/AFLO

片やトニーは若手時代から『チョウ・ユンファの地下情/追いつめられた殺意』(86)のスタンリー・クワン、『野獣たちの掟』(88)のイー・トンシン、『風にバラは散った』(89)のパトリック・タムなど、名だたる鬼才たちとの仕事を経験。ホウ・シャオシェン監督の『悲情城市』(89)以降は国際的に知名度を上げ、トラン・アン・ユンやアン・リーといった名匠たちのもとで繊細かつ自然な演技力を磨いていった。

彼らの共演作が「鹿鼎記」以降、皆無だったわけではない。だが、ハーマン・ヤオ監督の『インファナル・デイズ 逆転人生』(91)、エリック・ツァン監督の『蒼き獣たち』(91)、『黒衣部隊之手足情深』(93・未)といった作品は、その後のキャリアに影響する映画人との仕事という意味では大きかったが、決してエポックメイキングなものではなかった。また、ウォン・カーウァイ監督がいよいよ世界にその名を知らしめようとしていた頃の傑作『欲望の翼』(90)に、ふたりが出演者として名を連ねながら、劇中では共演していないという「すれ違いぶり」も、何やら象徴的である。まだその時ではない、という女神の采配だったのだろうか。

マフィアに潜入した警察官と警察に潜入したマフィアの対決を描く傑作『インファナル ・アフェア』
マフィアに潜入した警察官と警察に潜入したマフィアの対決を描く傑作『インファナル ・アフェア』[c]2002 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved. [c]2003 Media Asia Films (BVI) Ltd. All RightsReserved. [c]2003 Media Asia Films (BVI) Ltd. All Rights Reserved.

そして2002年、『インファナル・アフェア』が誕生する。両者にとって代表作となるほどのインパクトを備えた「満を持して」の共演作となったのは、偶然ではない。彼ら自身が再共演を特別なものにしたかったという意気込みと、時間をかけて企画を練ったからこそ得られた手応えは、アンディのこんな発言からもわかる。

アンディ:かなり前から彼(トニー)とはふたたび、共演したいと思っていたのですが、お互いのスケジュールの問題や僕らのキャラクターを生かせることのできる、いい脚本に出会うことがありませんでした。久しぶりに彼と共演してみて、役者としてお互いに成熟したと思いましたね。こんなに難しい役柄なのにもかかわらず、把握するのに時間がかからなかったんですよ。
(『インファナル・アフェア』DVD-BOXブックレット収録のインタビューより)


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