バービー、女性が生き抜くスキルを伝授!ハラハラが止まらない『ANORA アノーラ』鑑賞後に「濃い酒くれる?」
第97回アカデミー賞6部門にノミネートされた『ANORA アノーラ』が、2月28日(金)に公開。本作は、『タンジェリン』(15)、『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(17)など、アメリカ社会の「声なき声」を幾度となくすくいあげ、丁寧かつユーモラスに描写してきたショーン・ベイカーが監督を務める。本作で描かれるのは、ニューヨークを舞台に、身分違いの恋という古典的な題材を、21世紀風にリアルに映しだしたアンチ・シンデレラストーリーだ。
ストリップダンサーとして働くアノーラ(マイキー・マディソン)はある日、ロシアの新興財閥の御曹司イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と出会う。“契約彼女”の関係から始まった2人はたちまち結婚、幸せの絶頂へ。しかし、息子の結婚に反対するイヴァンの両親がニューヨークへ乗り込み、大騒動へと発展していく。
コメディタッチで描かれながらも、女性の生き方や自立、愛について深く考えさせられる、“シンデレラストーリーのその先”を描いた本作。ひと足早く鑑賞し、「セクシー&ドンガラガッシャッシャ~ン&ハートウォーミング!」な映画だと評するお笑い芸人のバービーに、見どころをたっぷり語ってもらった。
――バービーさんは本作をどんな視点でご覧になっていましたか?
「私は昔スナックで働いていて、芸人としてのスタートラインに立ったころのこととかも思い出して…アノーラたちにすごく共感しました。私はアノーラの同僚目線で鑑賞していて、いまも同僚の気持ちでこのインタビューに参加しているんですけど(笑)。“女性らしさ”を引き合いに出して仕事をしなければいけない方たちは、どこか自分をすり減らさなければいけない面もあると思うんですけど、彼女たちはすごく楽しそうに働いていて。ライバルなんだけど、『うちら仲間だよね?』みたいな女性同士の絆も垣間見えて、『いいぞ!もっとやれやれ!』って思いながら観ていました。しかも、アノーラが働く店のシステムはなかなかよく出来ているなあと。ああいうクラブ型の店舗って、日本にはまだないじゃないですか。性産業に従事する女性たちも、普通にお客さんが飲んでいるところに自分たちが声をかけるようなシステムなら働きやすいし稼ぎやすい。みんなウィンウィンなんじゃないかなと。だから途中から『どうすれば日本にも導入できるんだろう?』って思いながら観てました(笑)」。
――まさかビジネス視点でご覧になっていたとは…(笑)。バービーさんがアノーラの立場だったら、御曹司をねらいに行きますか?
「もちろん、絶対行きますね(笑)。いまの私には多少の小賢しさも備わっているので、どうすれば正当な報酬を得られるかを考えると思うんです。でも、きっとアノーラと同い年ぐらいだったら私も分別がつかなくて、『あれ?これもしかしたら本当のラブに変わるかも…!?』って、淡い期待を抱いてグッと深入りしちゃうかもなあ。だから、アノーラが御曹司とベッドインする前に、ハンドサインでちゃんとお金を要求していたシーンは、『しっかりしてるな~』って思いました」。
――アノーラは最初はあくまで、“上客”として御曹司と付き合ってますもんね?
「そうそう!だからこそプロポーズを受け入れる場面でちょっと泣けてきたんです。きっとあの御曹司は軽い気持ちでプロポーズをしたんだと思うけど、アノーラにとってプロポーズはもっと重いものだったから、最初のうちは『からかわないでよ』って真に受けないんですよ。本当は期待しているんだけど、傷つきたくないからはねのけちゃう感じがなんだか健気で泣けてくる。罪な男ですよね、あの御曹司は」。
――バービーさんから見て、あの御曹司はどんな人物に映りましたか?
「すごくリアリティのあるクズで。彼、役者さんですもんね?本物の“クズボンボン”かと錯覚するぐらい表情も行動も完璧でした。『なんでああいう笑い方になっちゃうんだろう?』っていう笑い方をしてましたし。広いリビングの廊下を勢いよくシャーッて横滑りしたあと、ピタッと止まる仕草なんて、まさにクズボンボンの典型ですよ(笑)。私、むしろアノーラよりも彼のほうが可哀想なところもあるよなって思いながら観てたんです。きっとホモソーシャルな世界にはああいう存在が必要なんでしょうね。みんな彼とツルんでるおかげで楽しいことができているにもかかわらず、本人がいないところではめちゃ悪口言ってる…みたいな(笑)」。