バービー、女性が生き抜くスキルを伝授!ハラハラが止まらない『ANORA アノーラ』鑑賞後に「濃い酒くれる?」
「やっぱりアノーラには底力があったんだな。泣くにも強さが必要だから」
――アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされたマイキー・マディソンの演技はいかがでしたか?
「『ほかの俳優がやったら失敗するのでは…?』というシーンもあったんですが、マイキーさんのポテンシャルの高さで『ドンガラガッシャッシャーン』って最後まで見せきったので(笑)。めちゃめちゃ感動しましたね。『これ見せきれる?』っていうハラハラ感と、『ここまでやっちゃう!?』っていうハラハラ感と、『おいおい、もうやめろって!』っていう、もはや保護者的な目線からのハラハラ感と。いろんなハラハラ感が混ざってテンションが上がっちゃいましたね!」
「最近になって、バービーという名前が誇らしくなってきた。ようやく時代が私に追いついてきたな(笑)」
――劇中、アノーラは自分のことを“アニー”と名乗っていて、「光」という意味の自分の本名が好きではないと話していましたが、ある人に「君に似合ってる」と言われてから、その名前を次第に受け入れるようになったのも印象的でした。バービーさんの芸名の由来って、どこから来ているんですか?
「あれはいまから10年前の話になるんですけど、バイト帰りに『芸名を決めなきゃ』と思って、街角にいた占い師さんに見てもらったら、『アメリカっぽい名前がいい』って言われたんですよ。私の中では『ダサ可愛いキャラ』がテーマだったので、『ダサ可愛いアメリカ人の名前ってなに?』って、当時私がテニスを教えていた帰国子女の中国人の子に訊いたら、バービーかドロシーだって。しかもいわゆる日本でいうところのツルさんとかカメさんみたいな。『いまはもうおばあちゃんしかいない名前なんだよ』って言われて一気にダサ可愛いアメリカの世界観が広がって。私はドロシーがいいなと思っていたんですけど、いろんな人に聞いてみたら『バービーのほうが明るいイメージがあるよ』っていうので、じゃあバービーにしようかと」。
――バービーという芸名はすぐにしっくりきましたか?それともしばらく経ってから自覚された感じですか?
「いまはもう普通に家でも『バビたん』って言っちゃいますけど(笑)。最初のころは、周りのみんなが『バービー』とか『バービーさん』って呼んでくれるのが楽しかったです。なぜかみんなが言いたがるんですよ(笑)。芸名って、自分のためじゃなくて、周りの人のための名前だから。みんながそう呼んでくれるのはいいなと思いました」。
――てっきり、バービー人形が由来なのかと思ってました!
「マテル社のバービーのことはなにも考えてなくて(笑)。でもいまの時代、バービーと言えば、女性をエンパワーメントするフェミニズムの象徴みたいな感じになってますよね。だから最近になって、バービーという名前が誇らしくなってきました。バービーにしてよかったな、ようやく時代が私に追いついてきたなって(笑)」。
――たしかに(笑)。では、最後に改めて本作の見どころをお願いします!
「『ANORA アノーラ』は、私みたいに普段それほど映画を観ないような人でもすごく楽しめる作品でした。ストーリー展開とか映像表現的にもめちゃくちゃ観やすいですし、笑えるだけじゃなくて、ロマンチックだったり、ちょっと切なくなったりする部分もあって。観る角度によって、受け取る印象が変わってくるところがおもしろいなって。すごく浅いようで深かったり、薄いようで濃かったり…。きっと作り手側もすごく楽しんで作っているんだろうなと思えたので、ぜひ劇場のスクリーンで『セクシー&ドンガラガッシャッシャ~ン&ハートウォーミング!』を堪能していただきたいです。もちろん、アノーラ世代にあたる20代前半のこれから青春を迎えるであろう人たちにもぜひ観てほしいですが、いまの私みたいに、『日々の生活に潤いが欲しい』とか『自分も昔はむちゃくちゃやってたぞ!』みたいな人が観たら、みるみる血がたぎってきて、『ちょっと濃い酒くれる?』みたいな感じになるんじゃないかと思います!」
取材・文/渡邊玲子