バービー、女性が生き抜くスキルを伝授!ハラハラが止まらない『ANORA アノーラ』鑑賞後に「濃い酒くれる?」
「踏み台にしていけばいい。人生になにも無駄はない」
――もしアノーラのように、愛する人にひどいことをされてしまったら、どうやって立ち直ります?
「いやあ…、さすがにあそこまでやられると、一気に冷めると思うな。それこそ友達と一緒にいる時はさんざん彼の悪口を言ったり、『ヤバい経験をしてしまったな』って落ち込んだり。でも、なんだかんだ一人でいると彼のことが気になって、数か月もしたら相手のSNSを開いて近況を調べてみちゃうかも…。
でも、もし私がクズボンボンみたいなステータスのある男性と恋に落ちたとして。彼の“最後の女”にはなれなかったとしても、自分のステータスもちょっと上がったような気になると思う。ましてやアノーラみたいな仕事に就いているなら、ランクが上がるというか。ステータスのあるお金持ちに見初められたこと自体、ある種のキャリアアップになるんじゃないかと」。
――若気の至りというより、むしろこの経験を踏み台にしろと。
「そう!踏み台にしていけばいいと思う。しかもあんなにハイソな暮らしを一度でも経験すると、所作にも出るじゃないですか」。
――どんな高級店に連れて行かれても、もう動じないみたいな(笑)?
「そうそう!場慣れするっていうかね。人生になにも無駄はないぞってことですよ」。
「この映画は、悲惨な目に遭った可哀想な女の子の話ではない」
――それはすごくいい考え方ですね。何事も失敗からしか学べないと思いますか?
「いや、私としてはあれを失敗とは思わない。むしろ『また一つ新たなアイテムをゲットしたぞ!』みたいな感覚のほうが強いかな。私、この映画って、悲惨な目に遭った可哀想な女の子の話ではなくて、明るいお話だと思いました。アノーラぐらいの年代の子たちって、自分が搾取されていることにすら気づいてない子たちも多くて。だからこそあそこまでできるんだと思うんです。その段階でボンボンの生活を垣間見れたというのは、ある意味すごくいいタイミングだったというか。だって彼女の年齢がもうちょっと上で、自分が搾取されてたんだってことにリアルに気づいてしまったとしたら、さらに傷が深かったと思うので」。
――コメディっぽい仕上がりになっているものの、アノーラのように玉の輿に乗って一攫千金をねらわない限り、貧困から抜け出せないというアメリカの現実的な側面も描かれています。バービーさんはどのようにご覧になりました?
「アノーラはこの先どう歩んでいくんだろう?あのお金をどう活用するのが彼女にとって一番いいんだろう?と考えながら観てました。いまの私だったら学校に通って資格を取るとか、ちゃんと自分のキャリアアップにつながるようなお金の使い方をすると思うんです。若いうちはよくても、いずれアイデンティティとしての仕事みたいなものが必要になってきますよね。やっぱり夜の蝶のオリジナリティには限界があるじゃないですか」。
――たしかに。「何歳までこの仕事で稼げるんだろう?」と不安になるかもしれない。
「だから、みんな自分の商品価値的を見越して、ネクストステージを考えると思うんです。自分のやりたいことや、自分にしかできないことを仕事にすることが、結果的に自分の生きやすさに繋がると思ってるので。アノーラも『自分が就きたい仕事に必要な資格を得るためにお金を使ってね。散在するなよ!』って思いましたね」。
――すごく深い視点ですね。バービーさんは、女性がこの時代を生き抜くためには、どんなものが必要だと思いますか?お金?スキル?それとも知恵でしょうか?
「いや、まずは情報でしょうね。そもそも、仕事というものは、“自分が社会に求められる接点”だと私自身は考えているので。仕事が生きがいになり得る部分もあると思うんです。だから、給与条件でもやりがいでも、別になんでもいいと思うんですが、いろんな意味で“いい仕事”や“好きな仕事”に就くために頑張るのがいいんじゃないかな。アノーラもなんとか踏ん張って自分にとっての“いい仕事”を見つけてほしいですね」。