あなたも“手紙”が書きたくなる。『35年目のラブレター』や『きみに読む物語』など心温まる映画6選
365通の手紙が愛する人の心を動かす『きみに読む物語』
アメリカの人気作家、ニコラス・スパークスの大ベストセラー小説をニック・カサヴェテス監督が映画化。『きみに読む物語』(04)のタイトルどおり、一人の老いた男性が認知症の女性に物語を読み聞かせるという形で、1940年代のアメリカ南部を舞台に家柄のいい裕福な家庭で育ったお嬢様アリーと、材木工場で働く青年ノアの情熱的な恋が描かれていく。
アリーとノアを演じたのは、ロマンティックなラブストーリーが似合うレイチェル・マクアダムスとライアン・ゴズリング。階層の違いからアリーの母親に引き裂かれてしまう2人の恋を再び結びつけるきっかけになるのが、別離の後、ノアが1年間、毎日1通ずつ書き続けた365通の手紙だ。7年の時を経て、アリーがついに受け取った手紙の束の大きさと重み、手紙の中の言葉こそが、彼女の背中を押す役割を果たしたのだとしみじみ実感できる。
秘めた想いを綴った代筆のラブレターに涙『シラノ・ド・ベルジュラック』
劇作家エドモン・ロスタンによる1897年の同名戯曲を、ジェラール・ドパルデュー主演で映画化した『シラノ・ド・ベルジュラック』(90)。才能あふれる詩人で剣の腕も一流だが、大きすぎる鼻のせいで容姿にコンプレックスを抱えるシラノ(ドパルデュー)は、片想いの女性ロクサーヌ(アンヌ・ブロシェ)と、口ベタで文才のない美青年クリスチャン(ヴァンサン・ペレーズ)の仲を代筆の恋文で取り持とうと奮闘する。
恋に弱気な主人公シラノは、愛する女性のためなら自己犠牲もいとわない健気なヒーロー。毎回、彼がクリスチャンになりかわって書くラブレターには、シラノ自身のロクサーヌへの深い想いがこめられ、その手紙に心打たれたロクサーヌがクリスチャンをますます愛するようになるという展開がおかしくもせつない。終盤、舞台が戦場に変わると物語はグッとシリアスに。手紙でつながった複雑な三角関係のラストに胸をわしづかみにされる。
亡き夫からの10通の手紙が妻を再生に導く『P.S.アイラヴユー』
アイルランドの女性作家セシリア・アハーンによるベストセラー処女小説を、ヒラリー・スワンクとジェラルド・バトラーの共演で映画化。『P.S.アイラヴユー』(08)は最愛の夫ジェリー(バトラー)を脳腫瘍で亡くし、悲しみに打ちひしがれていた妻ホリー(スワンク)が生前に夫が書き残していた手紙から勇気を得て、生きる力を取り戻していくビタースウィートな愛のドラマだ。
ホリーが30歳の誕生日を迎えたあと、様々な方法でジェリーから彼女に届く“消印のない”合計10通の手紙。それらに綴られたユーモアあふれる文面には、ジェリーの魅力的な人柄、強い絆で結ばれた夫婦の関係性がにじみ出ていて、彼からの楽しい提案に素直に従いながら、ホリーの心がほぐれていく過程がよく分かる。ジェリーにとってなにより大切なのは、ホリーの未来。手紙が届く仕掛けも重要ポイントで、妻を想う夫の深い愛情が胸を打つ。