あなたも“手紙”が書きたくなる。『35年目のラブレター』や『きみに読む物語』など心温まる映画6選
2年の時を隔てた文通から生まれた恋のゆくえ『イルマーレ』
『スピード』(94)以来、2度目の共演となるキアヌ・リーヴスとサンドラ・ブロックのファンタジックなラブストーリー『イルマーレ』(06)。オリジナルは2000年に公開された韓国の同名映画。2004年に生きる若き建築家アレックス(リーヴス)と、2006年に生きる女医ケイト(ブロック)が、不思議な現象によって文通を重ねながら、いつしか本気の恋に落ちてしまう。
“湖の家”の郵便受けを媒介に、異なる時期にその家に住む男女が、時を超えて手紙を通したコミュニケーションを行うことでお互いの人柄を知り、本音で語り合えるようになっていく。さりげない日常の報告やふと感じるさびしさといった繊細な感情を綴ることは、自分の内面を見つめ直す機会になるという手紙の隠れた効能にも焦点を当てているのが印象的。想いを自覚した後も会えそうで会えない、すれ違いの連続にやきもきしつつ、彼らの恋を応援せずにはいられない。
手紙の行き違いから始まった2世代の男女の恋愛模様と心の再生を描く『ラストレター』
岩井俊二監督が故郷である宮城を舞台に、姉を亡くした妹が、高校時代の淡い初恋の思い出をたどっていく、美しいひと夏の物語を描いた『ラストレター』(20)。松たか子、広瀬すず、福山雅治、神木隆之介、森七菜という豪華キャストが集結するほか、岩井監督の処女長編映画『Love Letter』(95)の中山美穂、豊川悦司が意表をつく役で登場し、作品に陰影を与えている。
死んだ姉・未咲(広瀬)と妹の裕里(松/森)、未咲の娘・鮎美(広瀬)と裕里の娘・颯香(森)、そして未咲の同級生で、裕里の初恋の相手だった鏡史郎(福山/神木)。裕里、鮎美、颯香の3人が、それぞれ未咲のフリをしながら、未咲の死を知らない鏡史郎と文通を続けることで、大人たちが高校生だったころの記憶がよみがえる。青春のきらめきと大人の痛みを対比させつつ、未咲が鮎美に残した最後の手紙には、感動で胸がいっぱいに。さわやかな余韻が観る者の心まで優しく包み込んでくれる。
長い時が経っても、受け取った人を励まし、支えにもなるのが手紙のいいところ。手書きの手紙を受け取ることが非日常になったいまだからこそ、映画のなかで描かれる手紙というモチーフは、存在そのものがドラマチックで輝いて見える。手紙を書く時間と、読む時間の尊さを感じさせてくれる映画を観たあとは、きっと誰かに手紙を書いてみたくなるはずだ。
文/石塚圭子