「自分に嘘をついた作品はない」原恵一監督が自身の30年を振り返る
今年、10月25日から11月3日にかけて開催された第30回東京国際映画祭。『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)などで知られる原恵一監督をフィーチャーした特集企画「映画監督 原 恵一の世界」には、連日多くのファンが会場へと詰めかけ、大盛況のうちに幕を閉じた。映画祭の会期中、原監督に今回の特集上映について感想を聞いてみた。
「最初は、どれくらいお客さんが来てくれるのか、とても心配だったんですけれど、毎回、大勢の方が来てくれてホッとしています。10月29日に行われた『エスパー魔美』の上映は21時という遅めの時間からの上映のうえに、台風による悪天候だったのですが、多くのお客さんが来てくれたのが嬉しかったです」
上川隆也との意外な出会い
毎回のトークショーでは、劇作家で脚本家の中島かずき、映画監督の樋口真嗣など、豪華なゲストが登壇。『河童のクゥと夏休み』(07)の上映回では、俳優の上川隆也とのトークが繰り広げられた。
「昔、樋口真嗣監督から誘われて飲み屋に行ったのですが、そこに上川さんにそっくりな人がいたんです。気になりながらもしばらく飲んでいたら、突然『申し遅れました、私、上川隆也です』と、すごく滑舌のいい感じでおっしゃられて、『あ、本物だった』と(笑)。上川さんはアニメーターになりたかったというくらいにアニメが大好きで、ものすごく詳しいんですよね。その時に『河童のクゥと夏休み』の試写状を送ったところ、作品を気に入ってくれたみたいで、今回のトークショーにゲスト参加してくれたんです」
映画監督デビューからの30年の間に
年代を問わず、皆が楽しめる作品を作り続けている原監督。今回の特集上映を期に、自身の監督作を振り返ってみての感想も聞いた。
「いろんなジャンルの作品を作ってきたな、と、いろんなキャラクターが並んだ今回の特集上映のポスターを見ると思うんですけれど、どの作品も自分に嘘をついて作った作品はないですね」
その中でも最も思い入れのある作品は、「20年間、ずっと作りたかった」という『河童のクゥと夏休み』だと語る。
「実は『本当に映画を作れるかどうかわからない』という時間も長くあったんです。そんな中で本当に作れただけでなく、いまだに愛してくれる人が数多くいてくださるんですよね。その時の僕が出せるものを全部出して作った作品なので、とても思い入れがありますね」
ベールに包まれた新作、その内容は?
10月27日に『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』の上映後に行われたトークイベントで、新作のビジュアルが初お披露目。15年公開の『百日紅~Miss HOKUSAI~』以来となる、原監督の劇場アニメである新作のイメージボードには、緑のアーチをくぐりながら、光に向かって自転車を押して歩く少女の後ろ姿が描かれていた。
アニメファンはもちろん、映画ファンも期待に胸を膨らませていること確実な作品について、監督に現時点で語れることを聞いてみると……。
「僕にとっては初めての本格的なファンタジー映画になるんですけど、今回は、とにかくお客さんに大サービスしようと思っています。笑いあり、涙あり、アクション満載の娯楽大作になると思いますので、楽しみにしていてください」と自信を持って答えてくれた。
取材・文/トライワークス
[c]藤子プロ・小学館・テレビ朝日・シンエイ・ADK 1988
[c]藤子プロ/シンエイ
[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2001
[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002
[c]2007 小暮正夫/「河童のクゥと夏休み」製作委員会
[c]2010 森絵都/「カラフル」製作委員会
[c]2013「はじまりのみち」製作委員会
[c]2014-2015 杉浦日向子・MS.HS/「百日紅」製作委員会