舞台関係者だからこそわかる『焼肉ドラゴン』のココが凄い!
映画『血と骨』(04)などの作品で脚本を手掛けた劇作家・演出家の鄭義信が長編映画初メガホンをとった『焼肉ドラゴン』が、本日6月22日(金)より劇場公開されている。
本作は、大阪で万国博覧会が催された1970年の高度経済成長に浮かれる関西の地方都市の片隅で、小さな焼肉店「焼肉ドラゴン」を営む夫婦とその子どもたち、さらに常連客との固い絆を描く人間ドラマ。賑やかな日々の中で、泣いたり笑ったり、そして何が起きても強い絆で結ばれていた家族の間にも、次第に時代の波が押し寄せていく姿を心温まる筆致で描いていく。
実はこの作品は、鄭監督自身が手掛け、日本の演劇賞を総なめにした戯曲が原作になっている。これまでに08年、11年、16年の3度にわたり上演され、その度に新たなファンを獲得した名作として演劇ファンに知られている。
舞台版「焼肉ドラゴン」が上演された新国立劇場のプロデューサーによると、初演の終演後、観客から「親や子どもたちに見せたい、席はまだあるか」と聞かれたり、観客が劇場のチケット売り場に直行する姿を見かけたりすることがよくあったとのこと。公演初日の時点ではチケットに余裕があったそうだが、初日以降は急激に席がなくなっていったという。物語は在日コリアンの家族の物語だが、お店を切り盛りする夫婦をはじめとした登場人物たちの生き様が、時代と世代を超えて共感できる、“家族の物語としての普遍性”がある点も、多くのファンを獲得した要因だ。
一方で、2016年に「鄭義信 三部作」上演を企画した新国立劇場演劇芸術監督・宮田慶子は作品の魅力について「出てくる人たちの気持ちが素っ裸になって、むきだしになった人と人がぶつかり合うことで、人間の真実が表現されていること」と評価。更に「劇場では舞台全体を広角で見せますが、映画には人物に寄る“アップ”がある。それによって人物の内面がクローズアップされているのが、映像の強み」と映画ならではの『焼肉ドラゴン』の魅力にも言及している。(※コメント全文は『焼肉ドラゴン』劇場プログラムに収録)
多くの映画ファンを虜にした感動作の映画版となる『焼肉ドラゴン』。実力派俳優たちの熱演を映画館の大スクリーンで堪能してほしい!
文/トライワークス