怪演を極めた東出昌大が“原点回帰”。男っぷりの良さがこぼれる爽やか好青年に
日本人離れした189cmという高身長で、独特な雰囲気を漂わせる俳優・東出昌大。近年、映画やドラマでは、束縛夫や詐欺師、異星人役など、その“怪演っぷり”が大きな話題に。そんな彼が最新主演作『寝ても覚めても』(9月1日公開)では、珍しく等身大の好青年を演じているので、そのギャップに注目しながら紹介しよう。
東出の代表的な“怪演キャラクター”といえば、なんといっても昨年話題となったドラマ「あなたのことはそれほど」の“束縛夫”涼太だろう。表向きは良き夫として振る舞いながら、妻の浮気を疑い、夜な夜な彼女の携帯を盗み見するなど次第に狂気に走っていく姿がトラウマ級に強烈!あまりの変貌ぶりにネット上では、かつて佐野史郎が出演したドラマ「ずっとあなたが好きだった」の役柄になぞらえ、“21世紀の冬彦さん”と騒がれたほど。
ほかにも、金髪ホスト、医者などに次々と変装する詐欺師役の「コンフィデンスマンJP」や、人間の脳に寄生する異星人に扮した『寄生獣』シリーズ。所作やオーラまで天才将棋棋士・羽生善治になりきった『聖の青春』(16)といった作品であらゆる難役に挑戦し、俳優としての幅を広げてきた。
そんなアクの強い役柄を演じてきた東出が一転し、自然体のイケメンに扮しているのが『寝ても覚めても』だ。本作は、柴崎友香による小説を原作に『ハッピーアワー』(15)の新進監督・濱口竜介が映像化したラブストーリー。顔が瓜二つだが性格が違う2人の男の間で揺れるヒロイン・朝子(唐田えりか)の心情が、繊細につづられていく。
東出が演じたのは、朝子が情熱的に愛したかつての恋人・麦(ばく)と、その麦と同じ顔を持つサラリーマンの“今カレ”亮平という二役。カジュアルな服装でボサボサ頭の麦は、突然唇を奪ったり、ふと放浪の旅へ出たりと、飄々としながらも朝子の心を捉えて離さない。一方、凛々しいスーツ姿の亮平は、朝子を一途に想い、困っている彼女へスッと救いの手を差し伸べるなど、頼れる大人の男だ。タイプは違うものの、どちらも親しみやすい好青年を演じており、デビュー当初にイケメン俳優として注目された東出の、原点回帰ともいえる役柄だ。
持ち前の爽やかなビジュアルとユニークな役で鍛えた演技力で、等身大かつ魅惑的な“新旧”彼氏を演じ分けた東出。彼の真骨頂とも言える2人の男性の魅力を、ぜひスクリーンで堪能してほしい。
文/トライワークス