柳楽優弥が演じる“土方十四郎”の魅力とは? 映画とdTV、2つの『銀魂』から分析
映画、そしてドラマの撮影について、柳楽は「映画は土方とトッシーの役柄があって、中身の違うキャラクターの差が一つの見せ場だったりするので意識して演じました。ドラマはギャグが満載です。自分のセリフで笑うことは普段あまりないのですが、初めてここまで笑いました。ナレーションに合わせて無表情を維持したり、逆に極端に表情でリアクションしたりすることが多かったのですが、福田監督が作ったナレーションが完璧で、そこでも笑ってしまいました(笑)」と振り返る。
ドラマ版前作の「ミツバ篇」や映画第2作で描かれる「真選組動乱篇」は泣ける場面が多く、「土方禁煙篇」「いくつになっても歯医者はイヤ篇」はギャグと振れ幅が大きいが、自身のなかでは、どのように演じ分けているのだろう。「福田組ではギャグ満載の方がテンションは上がります。ただ、監督のシリアスな作品も『ミツバ篇』を見て、やっぱり大好きだなって思いました。監督のさじ加減は本当に流石です」
「僕はムロツヨシさんや佐藤二朗さんのように、うまく人を笑わせられるような演技ができません。今は自分のコメディセンスにあまり可能性を感じていないので、(ギャグシーンは)自分が演じるより見ている方が好きです」と“笑い”の演技を謙遜。だが、3月下旬に都内で行われた撮影では、そんな柳楽の意外な一面が垣間見えていた。
その日の撮影は、トッシーと化した土方が万事屋を訪れ、戸惑う銀時たちと会話をするシーン。すっかりトッシーに成り切った柳楽が「なにを言ってるんだよ~坂田氏。この通り、正真正銘土方十四郎でござる」と言えば、すっかり銀さんと新八の役が板についた小栗旬と菅田将暉が、絶妙な間合いでツッコミを入れていく。
さらにトッシーは神楽(橋本環奈)をつかまえると、オタク用語を連発しながら写真を撮り始める。原作ではたった2コマのシーンだが、柳楽はアドリブを連発。橋本の異名をもじって「あっ、1000年に一度のやつもらっていいかな…?」と言ったと思えば「カメラがテンパってる!カメラが恋しちゃってる!」とアドリブを加速させていく。福田監督もスタッフも、笑いをこらえながらカットを待っており、カットがかかった瞬間、現場は大きな笑い声に包まれる。
自らのコメディセンスを“可能性を感じない”と表現する柳楽だが、それは彼の役者としてのストイックさによるものだろう。このシーンについて、現場でインタビューを受けた柳楽は「もともと笑わせたい欲が強いので」と笑顔を見せていた。
世界を驚かせた『誰も知らない』から14年、様々な役柄を通し獲得した硬軟併せもつ演技で、土方とトッシーの両極端なキャラクターを見事に演じ分けた柳楽。映画とドラマ、2つの「銀魂」は、俳優・柳楽優弥の多面的な魅力がいっぱいに詰まった、新たな代表作と言って間違いないだろう。
文/編集部