『ちょんまげぷりん』のともさかりえ「子育てしているお母さんたちに観てもらいたいです」
ある日、ちょんまげ姿の男が家の前にいたら? 見なかったことにする。それが現代人の普通の反応だろう。公開中の『ちょんまげぷりん』に出演のともさかりえも、「実際にあんな侍がいたら、完璧見ぬふり。なかったことにします(笑)」と話す。そんな彼女が今回演じたのは、錦戸亮扮する侍を家に居候させて一緒に暮らすというシングルマザー。今回、働く母でもある彼女に映画の見どころを語ってもらった。
5歳の息子・友也(鈴木福)と暮らすシングルマザーのひろ子(ともさかりえ)は、180年前の江戸からタイムスリップしてきた侍・木島安兵衛(錦戸亮)と出会う。行くあてもない安兵衛は、ひろ子たちの家に転がり込み、世話になるお礼に家事を手伝いだす。やがて安兵衛はプリン作りをきっかけにその才能を開花させ、パティシエを目指すことに。
原作は荒木源の同名小説。メガホンをとったのは『アヒルと鴨のコインロッカー』(08)の中村義洋。現代に現れた侍・安兵衛の活躍をユーモラスに見せながら、安兵衛とひろ子ら一家との交流を温かく描き、家族愛にあふれた心温まる作品に仕上がっている。できあがった映画を観たともさかも、「こんなに人の胸を打つ作品になるとは思いませんでした」と話す。
「私自身、参加していながらも、いい意味で裏切られたなと思います。すごくありえない設定のお話だから、もっと意図的に笑いをとろうと思えばできたけど、2LDKの家にお侍さんがいるというありえない状況なのに、ありえると思わせる説得力があった。それは、監督がリアルな気持ちで作っていくという一貫した姿勢があったからこそだと思います」。
ともさかりえは、92年CMデビューを経て、「金田一少年の事件簿」をはじめ、数多くのドラマや映画などに次々と出演。だが、第一線を走り続けてきた彼女にも、仕事への姿勢に苦悩していた時期があったという。そして母親になったことは女優業に良い影響をもたらしたそうだ。
「働くことの意味を、すごく自然に受け入れられるようになりました。仕事に対して責任感とか妙なストレスを感じてしまったこともあったけれど、年々楽になっている感じですね。子供ができると自分に使える時間が限られてくる。その限られた中で楽しもうとする回路が新しく作られたような気がします」。
最後に、この映画をどんな人に楽しんでもらいたいかを尋ねた。「同じような世代で子育てしているお母さんだったり、女性にとても共感してもらえる作品だと思います。男性陣には安兵衛さんのオトコ儀を是非学んでいただけたらと思いますね」。
ちょんまげ姿の侍が母子家庭の転がり込むというありえない設定ではあるが、侍の魂と母親の愛を感じさせる家族ドラマともいえる本作。ともさかりえの母親としての愛にあふれた演技と表情にも注目して、映画を楽しんでほしい。【取材・文/鈴木菜保美】
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