映画祭の華から期待の新進監督の作品まで!第31回東京国際映画祭の注目作をチェック
10月25日(木)から11月3日(土・祝)まで開催される「第31回東京国際映画祭」。今年も世界各国から集められた話題作や隠れた秀作などをラインナップ。また、メイン会場となる六本木のほかに今年3月にオープンした東京ミッドタウン日比谷ステップ広場でも各イベントが同時開催されるなど、映画に留まらずあらゆるカルチャーを取り入れた祭典が繰り広げられていく。
映画祭の花形とも言えるのは、世界中から応募があった作品の中から厳選された16作品が「東京グランプリ」を競い合うコンペティション部門。今年は2作品の日本映画をはじめ、フランスやデンマーク、ブラジルやトルコなど様々な国々の作品が上映。その中からとくに注目の作品をピックアップしていきたい。
まずは「ハリー・ポッター」シリーズで“名前を言ってはいけないあの人”役を演じたイギリスを代表する俳優レイフ・ファインズが、『英雄の証明』(11)と『エレン・ターナン 〜ディケンズに愛された女〜』(13)に続いてメガホンをとった『ホワイト・クロウ(原題)』。93年に54歳の若さでこの世を去ったバレエダンサー、ルドルフ・ヌレエフの半生を、現役ダンサーのオレグ・イヴェンコを主演に迎えて映画化。
共演にはパルムドール受賞作『アデル、ブルーは熱い色』(13)でヒロインを演じて脚光を浴びたアデル・エグザルコプロスと、昨年ドキュメンタリー映画が公開されたダンサーのセルゲイ・ポルーニン。またメガホンをとるファインズ自身もヌレエフの師であるプシキン役で出演している。
続いては『ゲート・トゥ・ヘヴン』(03)や『世界でいちばんのイチゴミルクのつくり方』(14)などファンタジックな世界観で人気を博すドイツの名匠ファイト・ヘルマー監督の『ブラ物語』。列車の車体に引っかかったブラジャーの持ち主を探す機関士の姿を描くという、まさに“シンデレラ・ストーリー”。
セリフが一切ないユニークな作風はもちろんのこと、本作もキャスティングが興味深いところ。『アンダーグラウンド』(95)で知られるユーゴスラビア出身の名優ミキ・マノイロヴィッチにスペインの実力派女優パス・ヴェガ、さらに映画ファンならおなじみのドゥニ・ラヴァンの共演という多国籍感が実にたまらない。
ほかにもカンヌ国際映画祭「ある視点」部門で注目を集めたカザフスタン映画『ザ・リバー』や、奇特な作風でカルト的人気を誇るハンガリーのパールフィ・ジョルジ監督の『ヒズ・マスターズ・ヴォイス』、毎回圧倒的な発想で驚きを与えてくれるフルーツ・チャン監督の『三人の夫』など個性豊かな顔ぶれが揃う。
それらを迎え撃つ日本勢も注目。阪本順治監督がメガホンをとり「新しい地図」の稲垣吾郎を主演に迎えた『半世界』、そしてインディーズ映画界を賑わせてきた今泉力哉監督が初めてコンペティションに挑む『愛がなんだ』。果たしてどの作品が東京グランプリに輝くのか。目が離せない!
また、近年急成長を見せる日本のインディペンデント界から新たな才能を発掘する「日本映画スプラッシュ」部門も必見。山戸結希が企画・プロデュースを務め15人の新進監督が手掛ける短編を集約させたオムニバス映画『21世紀の女の子』をはじめ、手塚治虫にも影響を与えたとされる漫画家・北沢楽天の人生を『花火思想』(13)の大木萠監督が描きだした『漫画誕生』。カラオケボックスを舞台にした大学生の一夜を描きだした劇団・玉田企画の舞台劇を映画化した『ある日々の話』など9作品がラインナップ。
今年から日本映画スプラッシュ部門では作品賞に加えて監督賞も設立。この中から、将来の日本映画界を担っていく才能が出てくるかもしれない。いまのうちに、新しい才能を先取りしてみてはいかがだろうか。
第31回東京国際映画祭「コンペティション」部門のチケットは10月13日(土)16時から、「日本映画スプラッシュ」部門のチケットは10月14日(日)12時から映画祭公式サイトにて発売される。
文/久保田 和馬