『パンズ・ラビリンス』も「パシリム」も…ギレルモ・デル・トロ監督の全10作品が観られる!

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『パンズ・ラビリンス』も「パシリム」も…ギレルモ・デル・トロ監督の全10作品が観られる!

今後巨匠と呼ばれる日が来ること間違いなし!
今後巨匠と呼ばれる日が来ること間違いなし!写真:SPLASH/アフロ

今年3月に発表された第90回アカデミー賞で、作品賞と監督賞を含む4部門に輝いた『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)を手がけたギレルモ・デル・トロ監督。デビュー作品となった『クロノス』(93)では吸血鬼となった老人を描き、つづく『ミミック』(97)では新種の生物よって恐怖に陥れられる近未来を描き出すなど、初期の頃はいわゆる“ジャンル映画”の監督として知られていたデル・トロ監督が、いかにして映画界最高の栄誉といわれるアカデミー賞を受賞する監督へと上りつめたのか。その理由を知るためには、やはり彼の作品に隈なく目を通すほかない。

【写真を見る】アカデミー賞を席巻した、美しすぎる愛の寓話に心震える…
【写真を見る】アカデミー賞を席巻した、美しすぎる愛の寓話に心震える…[c]2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

『シェイプ・オブ・ウォーター』は冷戦下のアメリカを舞台に、声を失くしたひとりの女性と、アマゾンの奥地から連れてこられた不思議な生きものとの種族を超えた愛の模様が描き出される。随所に織り交ぜられる庶民的な娯楽映画への愛に、冷戦という現実の中で花開くファンタジックな愛の寓話。一見するとクリーチャーが登場するジャンル映画だと思わがちなところを、社会派ドラマやサスペンス、そして何よりラブストーリーとして、あらゆる要素を加えながら豊潤な物語へと築き上げていく。

デル・トロ監督の作品には一貫して、社会の中で居場所を失くした、もしくは与えられない人々が登場する。そして彼らが現実と非現実が融合した世界の中で生きる様が描き出されるのだが、そこには彼らが救済されるという偽善的な顛末はなく、たとえ残酷であっても現実を鋭く突きつづけるという特徴がある。それはひとえに、映画を娯楽であると捉えながらも、その作品に込めたテーマを明確に世界へと発信するという側面をも尊重しているからであろう。さらにデル・トロ監督自身を育て上げてきたあらゆるカルチャーへの敬意が容易に見て取れるだけに、映画ファンの心を掴むのも至極当然なことだ。

圧倒的なディテールに息を呑む『パンズ・ラビリンス』
圧倒的なディテールに息を呑む『パンズ・ラビリンス』[c]2006 ESTUDIOS PICASSO, TEQUILA GANG Y ESPERANTO FILMOJ

最もそれが顕著に表れていたのが『パンズ・ラビリンス』(06)であろう。ジャンル映画監督というイメージを一気に払拭した、ある種のターニングポイントともいえるこの作品は、スペイン内戦下の時代を舞台に、孤独な少女オフェリアが森の奥にある迷宮へと迷い込み体験する不可思議なできごとを描き出したダークファンタジー。作品世界を強固なものとさせるディテールへの圧倒的なこだわりが高評価を得て、スペイン語作品でありながらアカデミー賞で撮影賞や美術賞など3部門に輝いた。

まさに『クロノス』の頃から、ひいてはそれ以前にデル・トロが映画界に入ったきっかけでもある特殊造形を学んでいた時代からのあらゆる要素が凝縮された『パンズ・ラビリンス』の世界観の確かさは、それ以前の『デビルズ・バックボーン』(01)などダークな作風の到達点であると同時に、その後の『クリムゾン・ピーク』(15)や『シェイプ・オブ・ウォーター』へと繋がるテーマ性を表出させる作家としてのスタートともなったといえよう。不穏さ、怖さ、グロテスク、すべてを顕在させながら、美しさがにじみ出る。どうしようもなく美しい画面だからこそ観客は目が離せなくなり、必然的に作品世界へと没入してしまう。デル・トロ監督という作家の持つ強みは、作品を重ねるごとにどんどんブラッシュアップされていることはもはや言うまでもないことだろう。

ミア・ワシコウスカが主演を務めたゴシック・ホラー『クリムゾン・ピーク』
ミア・ワシコウスカが主演を務めたゴシック・ホラー『クリムゾン・ピーク』[c]2015 Legendary Pictures and Gothic Manor US, LLC. All Rights Reserved.

もちろん、特殊造形を学んだ経歴やクセのある作風がメジャー映画でも勝負できることを証明したマーベル作品『ブレイド2』(99)やアメコミ作品「ヘル・ボーイ」シリーズもしかり、監督生活20年目の節目の年に彼の作家性の主幹となってきた日本のマンガやアニメカルチャーから受けた影響を表出させた『パシフィック・リム』(13)といった作品も、ギレルモ・デル・トロを語る上では欠かすことができない。

日本でも熱狂的な支持を集めた『パシフィック・リム』
日本でも熱狂的な支持を集めた『パシフィック・リム』[c]Warner Bros. Entertainment Inc. and Legendary Pictures Funding, LLC

そんなデル・トロ監督の全10作品が現在「BS10スターチャンネル」の特集シリーズ「コンプリート!」で放送されている。10月からスタートしたばかりのこの特集シリーズでは、「まだ巨匠と呼ばれていなくても独特の世界を確立させていたり、挑戦的な作品制作に果敢に挑戦している監督」をピックアップして、そのフィルモグラフィーを総ざらいしていくという企画だ。この機会にギレルモ・デル・トロ監督の生み出した、美しすぎる作品世界にどっぷりと浸かってみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬

<放送情報>
BS10 スターチャンネル 11月特集企画『コンプリート!映画監督ギレルモ・デル・トロ』
【STAR1 字幕版】11月24日(土)&11月25日(日)あさ~ 5作品ずつ一挙放送(全10作品)
■特集URL:https://www.star-ch.jp/complete/

<放送作品>
『シェイプ・オブ・ウォーター』『パンズ・ラビリンス』『パシフィック・リム』『クロノス』『クリムゾン・ピーク』『ブレイド2』『ミミック』『デビルズ・バックボーン』『ヘルボーイ』『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』

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