伝説のホラー『サスペリア』を再構築!監督が明かすリメイクのコンセプトとは?
そしてついに念願が叶う。リメイクする上で最大のコンセプトとなったものを訊いてみると「“1977年”という時代設定だ」と力強く即答。「オリジナル版が作られた年でもある77年は、私にとってとても神格化された年なんだ。だから脚本家のデヴィッド・カイガニックと話をした時に『77年にしよう』と真っ先に言ったよ」。当時のベルリンは冷戦下にあり、東西に分断されていた時代。劇中でも描かれているように、ドイツ赤軍による“ドイツの秋”と呼ばれる連続テロ事件が発生した年でもある。
「劇中にドイツ赤軍が登場するのも、もちろん77年という時代背景を示すものだ」と明かすグァダニーノ監督は、閉鎖的な環境で物語が進んでいたオリジナル版とは対照的に、社会全体に目を向けたこともポイントとして挙げる。「何よりも私が興味を持っていたのは、物語の舞台となる舞踏団の闇の部分と、外の世界で起こっている社会的な不安との比較だった。社会でのあらゆる対立が人々の不安をあおり、それが“魔女集団”の鏡になっているんだよ」。
また、鮮烈なホラー描写や血なまぐさい殺人描写が少ないという点においてもオリジナル版との大きな違いが。「オリジナル版では殺人が連続するが、バレエの描写と相関関係がほとんどない。けれど本作では、ダンスというものを魔女の持つ暗い闇の力を表現するための道具にしているんだ」と、特にこだわりを持つコンテンポラリー・ダンスの描写について言及。そして「ホラーというのは殺人だけでなく、あらゆるところに満ちているもの。私はこの映画自体が、アルジェントのオリジナル版へのオマージュになったと自負している」と、満足そうに微笑んだ。
取材・文/久保田 和馬
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